【感想】地獄極楽ガツンガツンと母の杖 むさし
- 2014/05/15
- 19:49
地獄極楽ガツンガツンと母の杖 むさし
【表記テロリズムとしての母の杖】
『おかじょうき』2014年4月号からむさしさんの句です。
はじめて眼にしたときからこの句の凄まじさが気になっていて、この凄まじさはどんなふうにことばにできるのかとじぶんなりにかんがえていました。
そこで、わたしがこの句でポイントとして読んでみたいのは、表記です。
上七が「地獄極楽」というみっちりした漢字が埋め尽くされることで、「地獄極楽」が(超)視覚的に表現されているようにおもいます。
ところが、中七において視覚的充実としての「地獄極楽」に対して聴覚的破壊が「ガツンガツンと」行われるのがこの句のおもしろさであり、ダイナミズムではないかとおもうんです。この「ガツンガツン」はみっちりした漢字表記の直後にカタカナ表記を用いることによって、「地獄極楽」としての漢字表記が砕けていくさまもこの句は同時に表現しているのではないかとおもうんです。それは漢字表記が象形的であるのに対し、そもそもカタカナとは漢字が省力化されて表記されたものです(たとえば、「加」→「カ」)。したがって、ここでは、「ガツンガツンと」打ち砕かれた「地獄極楽」としての漢字が砕け散り、カタカナになっている、というおもしろさがあるようにもおもうんです。
そしてその展開された視覚的「地獄極楽」を「ガツンガツンと」聴覚的に破壊したあとで下五においてそれらを統語するのは、いっぽんの線分としての「母の杖」です。
だからこの句のひとつの凄さっていうのは、わたしがおもうに、「地獄極楽」というみっちりした漢字表記が、「ガツンガツンと」カタカナ表記として粉砕され、それが最終的に「母の杖」としての一本の線分にまとめあげられるという表記上のダイナミズムにもあるのではないかとおもいのです。
一般的に「母」は、すべてを包容する「母性原理」として表象されることが多いとおもうのですが、この句において「母」は、破壊的・統率的に、むしろ「父性原理」の表象としてあらわれているようにもおもいます。この句においてはそういった文化的約束事としての「父性/母性」という表象の枠組みを転換させるダイナミズムにもすさまじさがあるのではないかとおもいます。
【表記テロリズムとしての母の杖】
『おかじょうき』2014年4月号からむさしさんの句です。
はじめて眼にしたときからこの句の凄まじさが気になっていて、この凄まじさはどんなふうにことばにできるのかとじぶんなりにかんがえていました。
そこで、わたしがこの句でポイントとして読んでみたいのは、表記です。
上七が「地獄極楽」というみっちりした漢字が埋め尽くされることで、「地獄極楽」が(超)視覚的に表現されているようにおもいます。
ところが、中七において視覚的充実としての「地獄極楽」に対して聴覚的破壊が「ガツンガツンと」行われるのがこの句のおもしろさであり、ダイナミズムではないかとおもうんです。この「ガツンガツン」はみっちりした漢字表記の直後にカタカナ表記を用いることによって、「地獄極楽」としての漢字表記が砕けていくさまもこの句は同時に表現しているのではないかとおもうんです。それは漢字表記が象形的であるのに対し、そもそもカタカナとは漢字が省力化されて表記されたものです(たとえば、「加」→「カ」)。したがって、ここでは、「ガツンガツンと」打ち砕かれた「地獄極楽」としての漢字が砕け散り、カタカナになっている、というおもしろさがあるようにもおもうんです。
そしてその展開された視覚的「地獄極楽」を「ガツンガツンと」聴覚的に破壊したあとで下五においてそれらを統語するのは、いっぽんの線分としての「母の杖」です。
だからこの句のひとつの凄さっていうのは、わたしがおもうに、「地獄極楽」というみっちりした漢字表記が、「ガツンガツンと」カタカナ表記として粉砕され、それが最終的に「母の杖」としての一本の線分にまとめあげられるという表記上のダイナミズムにもあるのではないかとおもいのです。
一般的に「母」は、すべてを包容する「母性原理」として表象されることが多いとおもうのですが、この句において「母」は、破壊的・統率的に、むしろ「父性原理」の表象としてあらわれているようにもおもいます。この句においてはそういった文化的約束事としての「父性/母性」という表象の枠組みを転換させるダイナミズムにもすさまじさがあるのではないかとおもいます。
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