【短歌・連作】「失われた鼻紙を求めて」『かばん』2014年7月号
- 2015/02/01
- 05:25
鼻ティッシュしたひとの場所つくってよ喫煙所みたく街角に咲く
ティッシュってみなしまう場所ちがってる こころの地図の伊能忠敬
挫折した屈伸の群れ(ばたばたと飛んでくティッシュ)花見は続く
引き抜きのその瞬間を語り出すティッシュの長老(あ、引き抜かれ…た)
怒ってるきみがつぎつぎ引きぬいて飛び交うティッシュ白い戦争
墓の脇ボックスティッシュ置いてあり墓碑銘ひかる「たっぷりと、かめ」
ティッシュってきみの香りを記録する装置なんだと鼻から思う
ティッシュ逝くあの世にはもう液体が一滴もない天国 ふわり
柳本々々「失われた鼻紙を求めて」『かばん』2014年7月号
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本号にて杉山モナミさんさんから連作の歌評をいただきました。ありがとうございました!
百年とちょっと眠って返信をLINEで返す「日本語でおk」 柳本々々
思うに、寝言は詩ではないでしょうか。百年スパンで昏々と眠る人との会話だって、ふつうにあり……一連はちょっと狂騒的な感じかな。今のコミュニケーションは、気づくと自分の意思とは関係なく支離滅裂になっていたりするし。そんな状態を作者は生々しく〈そのまま〉語ることはしない。そこで、グリム童話の「お菓子」と「斧」のコワイ二面性と、ソーシャル・メディアの「レビュー」の言葉は宇宙のどこかで出会ってしまう。 杉山モナミ「ことばを踊らせて~『かばん』5月号を読む~」
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ちいさな蜘蛛は精緻な機械ではなくてくりかえすからはじまる時間 杉山モナミ
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本号の表紙絵は、東直子さんの「睡蓮に空」でした。
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