【感想】玉川上水いつまでながれているんだよ人のからだをかってにつかって 望月裕二郎
- 2014/05/17
- 21:36
玉川上水いつまでながれているんだよ人のからだをかってにつかって 望月裕二郎
【トポスとしての玉川上水-記憶されるカラダ/忘却されるカラダ-】
すごくふしぎでおもしろい歌で、ずっとじぶんなりにかんがえていました。望月裕二郎さんの『歌集 あそこ』からの一首です。
玉川上水っていうのは、太宰治が「情死」したことで、ただの川ではなくて、〈言説の場〉になっていったということがひとつ大事なポイントのようにおもうんです。
なにがいまでも玉川上水を「なが」しているかというと、玉川上水そのものではなくて、太宰治というメディアを介して玉川上水をとりまくおびただしいことばの群れのようにおもうんです。
「人のからだをかってにつかって」という「かってにつか」われている語り手の位置も大事なのではないかとともおもいます。
つまりこの「玉川上水」は、「人のからだをかってにつか」うことによって、媒介的に流れつづけているわけで、そういった否応なしの媒介性と自動律がこの「玉川上水」という〈場〉においては問題になっているとおもうんですね。
また上の句のガ音の鼻濁音が下の句のカ音の破裂音にうつっていくのも注目してみたいところです。鼻濁音は、音律が濁りつつもながれゆくのが特徴的なんですが、破裂音は口蓋をいちど閉鎖し破裂させることによって発音することが特徴的です。
つまり、玉川上水の濁りつつ流れゆく上の句が、下の句で「人のからだをかってにつかって」と語り手が因果関係を語り出した瞬間、閉鎖としての破裂音によってつかえていくことが特徴なのではないかと。「人のからだ」とはそういった音律の〈つかえ〉としてもここで表象されているのではないかとおもうんです。
この歌には、「太宰治」とはいっさい書かれていないので、「太宰治」から読み込んでいくのは危険かもしれません。しかし、「玉川上水」のトポス(意味としての場所)から読み込んでいくならば、「玉川上水」とはつねに「太宰治」としての「人のからだ」を介して言説化されていく場所であり、また同じ日におなじように死んだはずのもうひとつの「人のからだ」である「山崎富栄」は忘却され、語り落とされていくジェンダーバイアスのかかった言説の流れる場所でもあったとおもいます。
そういったトポスとしての玉川上水の流れとせきとめをとてもきょうみぶかく短歌として結実させているうたのようにおもいます。
朝日新聞(昭和23年6月16日)
読売新聞(昭和23年6月20日)
【トポスとしての玉川上水-記憶されるカラダ/忘却されるカラダ-】
すごくふしぎでおもしろい歌で、ずっとじぶんなりにかんがえていました。望月裕二郎さんの『歌集 あそこ』からの一首です。
玉川上水っていうのは、太宰治が「情死」したことで、ただの川ではなくて、〈言説の場〉になっていったということがひとつ大事なポイントのようにおもうんです。
なにがいまでも玉川上水を「なが」しているかというと、玉川上水そのものではなくて、太宰治というメディアを介して玉川上水をとりまくおびただしいことばの群れのようにおもうんです。
「人のからだをかってにつかって」という「かってにつか」われている語り手の位置も大事なのではないかとともおもいます。
つまりこの「玉川上水」は、「人のからだをかってにつか」うことによって、媒介的に流れつづけているわけで、そういった否応なしの媒介性と自動律がこの「玉川上水」という〈場〉においては問題になっているとおもうんですね。
また上の句のガ音の鼻濁音が下の句のカ音の破裂音にうつっていくのも注目してみたいところです。鼻濁音は、音律が濁りつつもながれゆくのが特徴的なんですが、破裂音は口蓋をいちど閉鎖し破裂させることによって発音することが特徴的です。
つまり、玉川上水の濁りつつ流れゆく上の句が、下の句で「人のからだをかってにつかって」と語り手が因果関係を語り出した瞬間、閉鎖としての破裂音によってつかえていくことが特徴なのではないかと。「人のからだ」とはそういった音律の〈つかえ〉としてもここで表象されているのではないかとおもうんです。
この歌には、「太宰治」とはいっさい書かれていないので、「太宰治」から読み込んでいくのは危険かもしれません。しかし、「玉川上水」のトポス(意味としての場所)から読み込んでいくならば、「玉川上水」とはつねに「太宰治」としての「人のからだ」を介して言説化されていく場所であり、また同じ日におなじように死んだはずのもうひとつの「人のからだ」である「山崎富栄」は忘却され、語り落とされていくジェンダーバイアスのかかった言説の流れる場所でもあったとおもいます。
そういったトポスとしての玉川上水の流れとせきとめをとてもきょうみぶかく短歌として結実させているうたのようにおもいます。
朝日新聞(昭和23年6月16日)
読売新聞(昭和23年6月20日)
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