【感想】天国を去らねば生まれ変われない 松木秀
- 2015/02/07
- 13:41
天国を去らねば生まれ変われない 松木秀
【始めることは、手離すことだ】
『おかじょうき』2015年2月号から松木さんの句です。
何かを始めるためには、どうしても代償が要る。
それが端的にあらわれている句なんじゃないかとおもうんです。
始めることは、手離すことだ、と。
変わるためには「天国」であったしても、去らねばならない。
「天国」って生まれるための場所じゃなくて、留まるための場所だから。
だから、この句で読み手が発見する驚くべきことは、去る場所としての天国があるということです。
天国は、終着点でも、終点でも、ない。
天国さえも去ってこそ、生まれ変わることができる。
こういうさらに〈超〉をみすえていく視点って、わたしはニーチェの超人(スーパーマン)のかんがえかたにも近いのかなとおもったりします。
ニーチェは、たしかこんなふうに書いていたはずです。
ねえ、君、こんなに食欲をそそられたことはなかったが、いまはやっとおさまったものの、あやうく消化不良をおこすところだった。もし僕がこの素敵なぶどうの実で息でもつまらせたら、なんとも残念なことではないか。 ニーチェ『書簡集1』
すてきな葡萄──。
すいません、いや、まちがえました。
引用したかったのは、これではなく、こちらです。
人間の偉いところは、人間が橋であって、目的ではないことだ。人間が愛されるべき点は、人間が《移行》であり、《没落》であることだ。 ニーチェ『ツァラトゥストラ』
〈橋〉であること。自身を目的化してしまわないこと。
たとえそれが、移行であり、没落であれ、橋でありつづけること。
坂口安吾もいってましたよね。墜ちつづけることだって。わたしにとっての文学はいつまでも叱られつづける場所なんだって。
ニーチェはこんなふうにも書いていました。
未来や、一番遠いものを、君の今日にとっての原因とせよ。友だちのなかにいる超人を、君の原因として愛することだ。兄弟よ、隣人愛はすすめない。俺がすすめるのは遠人愛だ。 ニーチェ『ツァラトゥストラ』
松木さんの句をふまえて、こういうふうにもニーチェのことばをかんがえることができるのではないかとおもうのです。
生まれ変わるということは、じぶんをいかにじぶんにとっての〈遠いひと〉に、〈遠人化〉するかではないかと。
だからあなたは天国をみつけたら、天国を去らなければならない。
行かないと思う中国も天国も なかはられいこ
【始めることは、手離すことだ】
『おかじょうき』2015年2月号から松木さんの句です。
何かを始めるためには、どうしても代償が要る。
それが端的にあらわれている句なんじゃないかとおもうんです。
始めることは、手離すことだ、と。
変わるためには「天国」であったしても、去らねばならない。
「天国」って生まれるための場所じゃなくて、留まるための場所だから。
だから、この句で読み手が発見する驚くべきことは、去る場所としての天国があるということです。
天国は、終着点でも、終点でも、ない。
天国さえも去ってこそ、生まれ変わることができる。
こういうさらに〈超〉をみすえていく視点って、わたしはニーチェの超人(スーパーマン)のかんがえかたにも近いのかなとおもったりします。
ニーチェは、たしかこんなふうに書いていたはずです。
ねえ、君、こんなに食欲をそそられたことはなかったが、いまはやっとおさまったものの、あやうく消化不良をおこすところだった。もし僕がこの素敵なぶどうの実で息でもつまらせたら、なんとも残念なことではないか。 ニーチェ『書簡集1』
すてきな葡萄──。
すいません、いや、まちがえました。
引用したかったのは、これではなく、こちらです。
人間の偉いところは、人間が橋であって、目的ではないことだ。人間が愛されるべき点は、人間が《移行》であり、《没落》であることだ。 ニーチェ『ツァラトゥストラ』
〈橋〉であること。自身を目的化してしまわないこと。
たとえそれが、移行であり、没落であれ、橋でありつづけること。
坂口安吾もいってましたよね。墜ちつづけることだって。わたしにとっての文学はいつまでも叱られつづける場所なんだって。
ニーチェはこんなふうにも書いていました。
未来や、一番遠いものを、君の今日にとっての原因とせよ。友だちのなかにいる超人を、君の原因として愛することだ。兄弟よ、隣人愛はすすめない。俺がすすめるのは遠人愛だ。 ニーチェ『ツァラトゥストラ』
松木さんの句をふまえて、こういうふうにもニーチェのことばをかんがえることができるのではないかとおもうのです。
生まれ変わるということは、じぶんをいかにじぶんにとっての〈遠いひと〉に、〈遠人化〉するかではないかと。
だからあなたは天国をみつけたら、天国を去らなければならない。
行かないと思う中国も天国も なかはられいこ
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