【感想】自転車の乗り方で無職だとわかる 柴田夕起子
- 2015/02/14
- 01:19
自転車の乗り方で無職だとわかる 柴田夕起子
【いつか自転車に乗る日】
『バックストローク』31号から柴田さんの句です。
わたし、常々、自転車っておもしろいメディアだとおもっていて、こいで走りますよね。
だから、自転車ってある意味において、〈身体〉なんですね。だれもが最初はうまく乗れない。練習がいる。
それってオートマティックな機械だからじゃなくて、半身体的だからです。ある意味、自分が前転や倒立をするように〈練習〉がいる。
だからたしかベケットが自転車に乗るっていうのは、ケンタウルスになることだっていってましたが、ある意味、自転車に乗るっていうことは、サイボーグ化するってことだとおもうんですよ。
サイボーグ化するっていうのは、主体が割れる、ってことです。主体がはんぶん・はんぶんになる。
主体がはんぶん・はんぶんになるっていうのはじゃあどういうことになるかっていうと、主体がじぶんだけの主体ではなくなってしまう。
だから、他者に漏れてしまう。
それで柴田さんの句の語り手は、「自転車の乗り方で無職だとわか」ったんじゃないかって、おもうんですよ。
自転車ってじぶんの所属する場所の身体性を無意識に発露し、相手に譲渡してしまうメディアにもなるんですよ。
わたしもむかしふらふらしていた時期に、なかのよいひとから借りた自転車で、ふらふらとこいでいたときがあったんですが、あるときふっと、これじゃだめだとおもったんですよ。そのとき、ううっとうめいて、こぐちからがなくなって、坂のとちゅうだったからぐんぐん後ろにさがっていったんだけれども、でもこのままじゃほんとにだめだとおもって、たちこぎして坂をのぼりきったわけです。
そうしたら知らない街と知らない青空が、みえた。
じゃあこのままあのひとの家に行こう、っておもったんです。ひさびさにあのひとに会おうって。あのひとに会うならいまこのときだぞ、って。
そうしたら電話がきたんです。
自転車返してください、って。
自転車ってそんなふうに、いつまでもじぶんを他者化するものなんです。
だから、わたしはいったんです。
わかった。帰るね、って。
知らない街と知らない青空を背にして、
けんたうるすに、なるということ。
坂を、そのまま、自転車けんたうるすとして、駆け抜けるということ。
合法的な、ひゅん、ひゅうん、ひゅうううううん。
雨降り続く合法のオイディプス 清水かおり
【いつか自転車に乗る日】
『バックストローク』31号から柴田さんの句です。
わたし、常々、自転車っておもしろいメディアだとおもっていて、こいで走りますよね。
だから、自転車ってある意味において、〈身体〉なんですね。だれもが最初はうまく乗れない。練習がいる。
それってオートマティックな機械だからじゃなくて、半身体的だからです。ある意味、自分が前転や倒立をするように〈練習〉がいる。
だからたしかベケットが自転車に乗るっていうのは、ケンタウルスになることだっていってましたが、ある意味、自転車に乗るっていうことは、サイボーグ化するってことだとおもうんですよ。
サイボーグ化するっていうのは、主体が割れる、ってことです。主体がはんぶん・はんぶんになる。
主体がはんぶん・はんぶんになるっていうのはじゃあどういうことになるかっていうと、主体がじぶんだけの主体ではなくなってしまう。
だから、他者に漏れてしまう。
それで柴田さんの句の語り手は、「自転車の乗り方で無職だとわか」ったんじゃないかって、おもうんですよ。
自転車ってじぶんの所属する場所の身体性を無意識に発露し、相手に譲渡してしまうメディアにもなるんですよ。
わたしもむかしふらふらしていた時期に、なかのよいひとから借りた自転車で、ふらふらとこいでいたときがあったんですが、あるときふっと、これじゃだめだとおもったんですよ。そのとき、ううっとうめいて、こぐちからがなくなって、坂のとちゅうだったからぐんぐん後ろにさがっていったんだけれども、でもこのままじゃほんとにだめだとおもって、たちこぎして坂をのぼりきったわけです。
そうしたら知らない街と知らない青空が、みえた。
じゃあこのままあのひとの家に行こう、っておもったんです。ひさびさにあのひとに会おうって。あのひとに会うならいまこのときだぞ、って。
そうしたら電話がきたんです。
自転車返してください、って。
自転車ってそんなふうに、いつまでもじぶんを他者化するものなんです。
だから、わたしはいったんです。
わかった。帰るね、って。
知らない街と知らない青空を背にして、
けんたうるすに、なるということ。
坂を、そのまま、自転車けんたうるすとして、駆け抜けるということ。
合法的な、ひゅん、ひゅうん、ひゅうううううん。
雨降り続く合法のオイディプス 清水かおり
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