【短歌・連作】「かみさま」『かばん』2015年3月号
- 2015/03/10
- 21:41
【詞書】寝床で眠りに入る前に熊の神様にお祈りをした。人の神様にも少しお祈りをした。 川上弘美『神様』
いつまでももしかしたらを呉れないでわたしはきょうもかみさまといる
ぴこぴこと天井裏から音がしてかみさまのあしがすらりと垂れる
「ひきだしのおくにかみさまいる」ときみ ときどきおくにかえろうとする
気づいたらみんなが白い服着てる 合コンじゃないあれはかみさま
黄色い線の内側にみんないる しゅうきょうだからかみさまがくる
セックスの神様などと呼ばれてる男優がきて嗤う秋葉原
十二時に十二秒だけあらわれるかみさまがいる@YouTube
いつまでももしかしたらを呉れるからわたしはきょうもかみさまといる
柳本々々「かみさま」『かばん』2015年3月号
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【添え書きの花園】
さいきん神保町に行くのが好きなんですが、ときどきうれしいことがあると、やったー、と飛び跳ねていたりします。神保町なので、みんなが、みます。かみさま。
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【かばん新春題詠二〇一五・題「おへそ」】
流星の埋め尽くす夜あなたから告げられているオリオンのへそ 柳本々々
【歌会でいただいた評】
イメージが美しいので、一点は入れるかもしれない。ただ「あなたから告げられている」という部分がややぼけている感じがする。比較的地に足がついた歌だと思う。「オリオンのへそ」については何を指すのかに関して議論があった。もともとオリオンにはへそはないのだそうで、三連星のすべてをへそにみたてているのだろうかとか、どうもそのあたりはアバウトに作っているのではないか等々。また、女性から適当に告げられていることを、男性(作中主体)は疑いながら聞いているのでこのような表現になるのではないかという秀逸な解釈も披露された。
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本号にて茂泉朋子さんから、ていねいな歌評をいただきました。読ませていただいてとても勉強になりました。ありがとうございました!
やわはだのあつきちしおにふれもみでつけまもつけできゃりーぱみゅぱみゅ 柳本々々
いのちなき砂のかなしさよきらきらときゃりーぱみゅぱみゅ指の間より落つ 〃
この二首噛まずに音読できますか? という冗談はさておき、きゃりーと短歌のミラクルなコラボ(まだ冗談を言っている)。有名な近代短歌、という以上に、肌に触れない、指の間からこぼれる砂、と、無機物性の強い短歌がコラボの対象として選ばれたのは、きゃりーの人工物っぽい雰囲気のなせる技だろうか。しかし、きゃりーたる者、つけまはつけなきゃだめだと思う。 茂泉朋子「一月号評」
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ことろことろ子をとろ子捕ろと繰り返す夢の中なる列車の響き 茂泉朋子
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本号の表紙絵は、東直子さんの「菜の花を見た日」でした。
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