【エッセイ】「定型をめぐる星間飛行と、キス。」『おかじょうき』2014年7月号・掲載
- 2015/03/10
- 22:05
定型詩としての五七五をめぐる川柳についてよく考えている。
五七五とは、フィールドのようなものではないかと思う。各人がめいめいのやり方でそのフィールドを散策し、おのおのの坑掘を発見する。五七五というフィールドではじめてみつけることのできた坑道であり、五七五を通ることなしにはみつけられずにいた坑掘である。
でもここで肝心なことは、そこにたたずんでいることは許されないということだ。もろてにたくさんの宝石をにぎりしめながらも、わたしは五七五によってまたフィールドに連れ戻される。五七五とはそのような厳格な他者としても機能している。そこに安住するな、と。
五七五のメッセージはつねに逆説的なのではないだろうか。ここが楽園だよ、と五七五はいう。みなが平等です、耕しなさい、と。あなたが耕せば耕すほど実りはやってくる、と。
しかしその一方で、行きなさい帰りなさいとどまるな安住するな、と五七五はいう。なぜならここはわたしだけのフィールドではなく、五七五を介したさまざまな立場のひとが出入りするフィールドだからだ。
わたしはさまざまなひととめぐりあい、おののき、安堵し、くみかえられる。こんなひともいたし、あんなひともいた。すべては五七五のなかでのできごとである。
五七五は、すごくふしぎな生態だ。わたしはその五七五のなかで生き抜くことができないかもしれない。けれども、その五七五がまた手をさしのべてくれる。だいじょうぶわたしはかわらないこんにちは五七五です、と。
そのようなダイナミックな邂逅はすべて五七五というフィールドでおこなわれる。銀河規模のおそろしさとわくわくをともなって。すなわち、
あなたの星とわたしの星がキスをした むさし
柳本々々「定型をめぐる星間飛行と、キス。」『おかじょうき』2014年7月号・掲載
五七五とは、フィールドのようなものではないかと思う。各人がめいめいのやり方でそのフィールドを散策し、おのおのの坑掘を発見する。五七五というフィールドではじめてみつけることのできた坑道であり、五七五を通ることなしにはみつけられずにいた坑掘である。
でもここで肝心なことは、そこにたたずんでいることは許されないということだ。もろてにたくさんの宝石をにぎりしめながらも、わたしは五七五によってまたフィールドに連れ戻される。五七五とはそのような厳格な他者としても機能している。そこに安住するな、と。
五七五のメッセージはつねに逆説的なのではないだろうか。ここが楽園だよ、と五七五はいう。みなが平等です、耕しなさい、と。あなたが耕せば耕すほど実りはやってくる、と。
しかしその一方で、行きなさい帰りなさいとどまるな安住するな、と五七五はいう。なぜならここはわたしだけのフィールドではなく、五七五を介したさまざまな立場のひとが出入りするフィールドだからだ。
わたしはさまざまなひととめぐりあい、おののき、安堵し、くみかえられる。こんなひともいたし、あんなひともいた。すべては五七五のなかでのできごとである。
五七五は、すごくふしぎな生態だ。わたしはその五七五のなかで生き抜くことができないかもしれない。けれども、その五七五がまた手をさしのべてくれる。だいじょうぶわたしはかわらないこんにちは五七五です、と。
そのようなダイナミックな邂逅はすべて五七五というフィールドでおこなわれる。銀河規模のおそろしさとわくわくをともなって。すなわち、
あなたの星とわたしの星がキスをした むさし
柳本々々「定型をめぐる星間飛行と、キス。」『おかじょうき』2014年7月号・掲載
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