【川柳】靴紐が…(第23回 朝日中部川柳大会 佳作・八上桐子 選)
- 2014/05/21
- 20:19
靴紐が結べないからわたしです 柳本々々
梅になる夢を見ている行き止まり
(第23回 朝日中部川柳大会 佳作・八上桐子 選)
【徳永政二さんとひとり静さんの靴紐をさぐる】
八上桐子さんから上の二句を佳作として選んでいただきました。
八上桐子さんが選句したものからわたしが気になった句を恣意的にあげてみます。
答えですコップの水があふれます 徳永政二
笑ってる顔をはめ込むだけの穴 久保田紺
あの淡くなった辺りに住んでます 北村幸子
ういろうの弾力だろう幼稚園 岩田多佳子
いくつもいくつも春がカーブを投げている 街中悠
いるものといらないものとあなたかな 乙黒初音
花吹雪だった 手術中だった 柴田美都
後ずさりしながら水になってゆく 天谷由紀子
きらきらとなんにもしない時間です ひとり静
数式にそっと踵をのせてみる 丸山進
弱りゆく部分が一番澄んでいる 渡辺妙子
徳永政二さんの句に有名な「悲しみはつながっているカーブする」という句があるんですが、うえの「答えですコップの水があふれます」の句もそうであるように、徳永さんの句は決定的なまさにその瞬間が現在形である、といった特徴があるようにおもいます。「悲しみ」がつながった瞬間、語り手は「カーブ」を感じる。「答え」が出た瞬間に「コップの水があふれ」る。語り手はなにかが変節する決定的な瞬間にたちあうときに、場そのものの変転にたちあいます。いま、ここのカーブを体感する語り手、という現在形が徳永さんの句の魅力のひとつにあるのではないかと。
また、ひとり静さんの句について以前感想文を書いてみたことがあるのですが(参照:http://yagimotomotomoto.blog.fc2.com/blog-entry-29.html" title=" 【感想】おじゃまにはならないポだと思います ひとり静"> 【感想】おじゃまにはならないポだと思います ひとり静 )、八上さんの選んだ「 きらきらとなんにもしない時間です」「ツバキ的不安はうつる気がします 」「土かけてみましたシュールリアリズム」といったひとり静さんの句をみていると、そのとき感想文に書いたこともそうだったのですが、ひとり静さんの句のふしぎな位相と説得力は、丁寧なことばづかいにあるようにも思います。この短い定型のなかにあって、饒舌体となってしまうような丁寧語を使うということはそれだけ語り手が聞き手に対して積極的態度を採用しているからではないかとおもうんです。語り手には聞き手に対して確信的な聞かせたい内容をもっている。そういう語り手の態度が「です」「ます」「ました」にあらわれているようにおもいます。ていねいではあるが、ていねいであるために定型において決意をかんじさせるタフな語り手。それがひとり静さんの句の魅力のひとつのようにもおもいます。
さいごになりますが、八上桐子さん、選句してくださりありがとうございました。
倉本朝世さんも引いておられた句なのですが、わたしが好きな八上さんの句をひいてこの文章をおわりにしたいとおもいます。
もうすこし私を待ってみるスタバ 八上桐子
梅になる夢を見ている行き止まり
(第23回 朝日中部川柳大会 佳作・八上桐子 選)
【徳永政二さんとひとり静さんの靴紐をさぐる】
八上桐子さんから上の二句を佳作として選んでいただきました。
八上桐子さんが選句したものからわたしが気になった句を恣意的にあげてみます。
答えですコップの水があふれます 徳永政二
笑ってる顔をはめ込むだけの穴 久保田紺
あの淡くなった辺りに住んでます 北村幸子
ういろうの弾力だろう幼稚園 岩田多佳子
いくつもいくつも春がカーブを投げている 街中悠
いるものといらないものとあなたかな 乙黒初音
花吹雪だった 手術中だった 柴田美都
後ずさりしながら水になってゆく 天谷由紀子
きらきらとなんにもしない時間です ひとり静
数式にそっと踵をのせてみる 丸山進
弱りゆく部分が一番澄んでいる 渡辺妙子
徳永政二さんの句に有名な「悲しみはつながっているカーブする」という句があるんですが、うえの「答えですコップの水があふれます」の句もそうであるように、徳永さんの句は決定的なまさにその瞬間が現在形である、といった特徴があるようにおもいます。「悲しみ」がつながった瞬間、語り手は「カーブ」を感じる。「答え」が出た瞬間に「コップの水があふれ」る。語り手はなにかが変節する決定的な瞬間にたちあうときに、場そのものの変転にたちあいます。いま、ここのカーブを体感する語り手、という現在形が徳永さんの句の魅力のひとつにあるのではないかと。
また、ひとり静さんの句について以前感想文を書いてみたことがあるのですが(参照:http://yagimotomotomoto.blog.fc2.com/blog-entry-29.html" title=" 【感想】おじゃまにはならないポだと思います ひとり静"> 【感想】おじゃまにはならないポだと思います ひとり静 )、八上さんの選んだ「 きらきらとなんにもしない時間です」「ツバキ的不安はうつる気がします 」「土かけてみましたシュールリアリズム」といったひとり静さんの句をみていると、そのとき感想文に書いたこともそうだったのですが、ひとり静さんの句のふしぎな位相と説得力は、丁寧なことばづかいにあるようにも思います。この短い定型のなかにあって、饒舌体となってしまうような丁寧語を使うということはそれだけ語り手が聞き手に対して積極的態度を採用しているからではないかとおもうんです。語り手には聞き手に対して確信的な聞かせたい内容をもっている。そういう語り手の態度が「です」「ます」「ました」にあらわれているようにおもいます。ていねいではあるが、ていねいであるために定型において決意をかんじさせるタフな語り手。それがひとり静さんの句の魅力のひとつのようにもおもいます。
さいごになりますが、八上桐子さん、選句してくださりありがとうございました。
倉本朝世さんも引いておられた句なのですが、わたしが好きな八上さんの句をひいてこの文章をおわりにしたいとおもいます。
もうすこし私を待ってみるスタバ 八上桐子
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