【感想】ことろことろ子をとろ子捕ろと繰り返す夢の中なる列車の響き 茂泉朋子
- 2015/03/24
- 06:00
ことろことろ子をとろ子捕ろと繰り返す夢の中なる列車の響き 茂泉朋子
*
M ふしぎな音の触感をもつ茂泉さんの一首です。
Y 「ことろことろ」って擬音からはじまってるんですが、その「ことろことろ」がだんだん擬音じゃなくてすこしずつ意味としてたちあがっていきますよね。それがなんだかこわおもしろいようにおもいます。
M そうなんですよね。語り手はどうも夢の中で列車に乗ってるようなんですが、この列車って、〈意味の列車〉なんですよ。乗ってれば乗ってるほど、意味がわかってきてしまう列車。しかも夢のなかですから、これってある意味、じぶんの無意識を旅しているわけです。だから、この意味の列車に乗ってれば乗ってるほど、じぶんがふだん抑圧し掩蔽している部分にきがついちゃうので、はやく降りないといけないとおもうんですよ。でないと、たぶん、語り手はじぶんじしんに〈正対〉してしまうことになってしまうから。
Y さいしょは「ことろ」だったのに、「子捕ろ」ってじぶんの〈こわい〉部分に気がつきはじめてますよね。
M たぶん、夢っていうのは、いつもそういう意味と非意味のあわいの緊張感があるんじゃないでしょうか。「ことろ」かもしれないし、「子捕ろ」かもしれない。でも語り手は、不可逆の意味のベクトルにもう乗ってしまっている。なにか気がついてはいけないことに気がつきはじめている。これが、現実だったらまだいいのですが……
Y あ、そうか、夢だから、じぶんじしんの檻から逃げようがないんだ。しかも列車だから…
M 降りようがないんですよ。覚めない限り。でも、語り手は、ある意味、夢のなかで覚醒しているともおもうんです。ことろが意味をなしていく過程が、わりと理知的というか、構造的じゃないですか。だから、語り手は、夢のなかで現実にであってしまっているという、シリアスな状況にでくわしているんじゃないかとおもいます。
Y じゃあ、夢から出るにはどうしたらいいんですかね。
M 〈終わり〉って思うことだとおもうんですよ。夢は物語ではないから、どこで終わってもいい。不条理で、非合理で、無駄で、いいんです。夢、だから。だから、終わり!っておもったら、どんなに中途でも、〈そこ〉が夢の終わりです。ですから、
Y ということは、ああ、そうか、終わるんだ、まだ話のとちゅうだけ
(終わり)
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M ふしぎな音の触感をもつ茂泉さんの一首です。
Y 「ことろことろ」って擬音からはじまってるんですが、その「ことろことろ」がだんだん擬音じゃなくてすこしずつ意味としてたちあがっていきますよね。それがなんだかこわおもしろいようにおもいます。
M そうなんですよね。語り手はどうも夢の中で列車に乗ってるようなんですが、この列車って、〈意味の列車〉なんですよ。乗ってれば乗ってるほど、意味がわかってきてしまう列車。しかも夢のなかですから、これってある意味、じぶんの無意識を旅しているわけです。だから、この意味の列車に乗ってれば乗ってるほど、じぶんがふだん抑圧し掩蔽している部分にきがついちゃうので、はやく降りないといけないとおもうんですよ。でないと、たぶん、語り手はじぶんじしんに〈正対〉してしまうことになってしまうから。
Y さいしょは「ことろ」だったのに、「子捕ろ」ってじぶんの〈こわい〉部分に気がつきはじめてますよね。
M たぶん、夢っていうのは、いつもそういう意味と非意味のあわいの緊張感があるんじゃないでしょうか。「ことろ」かもしれないし、「子捕ろ」かもしれない。でも語り手は、不可逆の意味のベクトルにもう乗ってしまっている。なにか気がついてはいけないことに気がつきはじめている。これが、現実だったらまだいいのですが……
Y あ、そうか、夢だから、じぶんじしんの檻から逃げようがないんだ。しかも列車だから…
M 降りようがないんですよ。覚めない限り。でも、語り手は、ある意味、夢のなかで覚醒しているともおもうんです。ことろが意味をなしていく過程が、わりと理知的というか、構造的じゃないですか。だから、語り手は、夢のなかで現実にであってしまっているという、シリアスな状況にでくわしているんじゃないかとおもいます。
Y じゃあ、夢から出るにはどうしたらいいんですかね。
M 〈終わり〉って思うことだとおもうんですよ。夢は物語ではないから、どこで終わってもいい。不条理で、非合理で、無駄で、いいんです。夢、だから。だから、終わり!っておもったら、どんなに中途でも、〈そこ〉が夢の終わりです。ですから、
Y ということは、ああ、そうか、終わるんだ、まだ話のとちゅうだけ
(終わり)
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