【感想】花畑の中で包帯ほどかれる 広瀬ちえみ
- 2015/03/26
- 06:45
花畑の中で包帯ほどかれる 広瀬ちえみ
*
M 広瀬ちえみさんの一句です。
Y 「包帯」をほどかれるときってそれはそれで傷がやっと癒えたことのドラマかもしれないけれど、その包帯を〈どこ〉でほどくかによってドラマのありかたが変わってきますよね。
M ええ。「花畑の中で」なんですよね。しかもこの句が大事なのは「ほどかれる」と受け身になっている点だとおもいます。すくなくともふたり以上、この句にはいるわけです。
Y あ、そうか。なにげなく感じてしまっているけれど、短詩で受け身があらわれたら、それはその句のなかの人数がふえていくということなのか。
M あとですね、受け身でもうひとつ大事なのが、〈じぶんの意志〉とはべつの〈意志〉が発現するということなんじゃないかとおもうんですよ。この句でいえば、わたしは包帯をほどく気はなかったかもしれない。でも、ほどかれてしまった。意想外だったかもしれないですよね。ちなみにYさんは「花畑の中で」って、どんなかんじがしますか。
Y そうですね。らんらん、かな。らんらんるー。らんらんるー、かな。あとは、なんだろう、るるる、かな。るるるらんらんるー、かな。らんらんるー、らんら
M はい、はい、もうだいじょうぶです。「花畑の中」ってたいていたのしいことですよね。開放感があるはずなんです。だから、この包帯をほどくことに開放感があるはずなんです。でもなんかうしろめたかったり、こわかったりしませんか。
Y やっぱりそれは包帯でしょうか。包帯をほどくしゅんかんって、開放感っていうよりもむしろ、こわいですよね。治ってるかどうかわからないし、隠されていた皮膚や身体が他者のような気もするから。
M そうなんですよね、包帯って身体をある意味、隠蔽・掩蔽しつづけるってことなんですよ。だから、じぶんのからだを、他者化することでもある。包帯をほどくって、じぶんの身体に再会するってことでもありますよね。
Y だから包帯をほどくときってこわさみたいなものがあるのかあ。
M あのヱヴァンゲリヲンで綾波レイという方が包帯だらけだったんですが、あれもひとつの身体の抑圧になっているのではないかとおもうんですよね。
Y でもほどいたのが花畑だったってことは、その抑圧が一気に開花して昇華して吹き荒れ、咲き荒れるような状況にあったってことですか。
M しかも、それが他者の手を介して行われるってことですよね。
Y じゃあ、たとえば怪物でミイラ男もいるけれど、あれはひとつの身体の抑圧としてみてもいいんですか。
M たぶん、モンスターってひとつの身体論なんじゃないかとおもうんですよね。フランケンシュタインの怪物もつぎはぎの身体が自らの身体として身体化できない抑圧、たとえばドラキュラやゾンビなんかも他者の身体をつねに希求しつづけなければ〈生き〉てはいけない点で、身体コンプレックスを抱いているとおもうんです。身体の自足ができていないってことです。
Y 身体の自給自足かあ。ホラー映画って身体のショッピングセンターみたいなところがあるかもしれませんね。身体のIKEAみたいな。
M それはないな。
Y !?
M そういうたとえは、ない。
Y ……。
(ゆっくりと、ひかりがほどかれるように、暗転)
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M 広瀬ちえみさんの一句です。
Y 「包帯」をほどかれるときってそれはそれで傷がやっと癒えたことのドラマかもしれないけれど、その包帯を〈どこ〉でほどくかによってドラマのありかたが変わってきますよね。
M ええ。「花畑の中で」なんですよね。しかもこの句が大事なのは「ほどかれる」と受け身になっている点だとおもいます。すくなくともふたり以上、この句にはいるわけです。
Y あ、そうか。なにげなく感じてしまっているけれど、短詩で受け身があらわれたら、それはその句のなかの人数がふえていくということなのか。
M あとですね、受け身でもうひとつ大事なのが、〈じぶんの意志〉とはべつの〈意志〉が発現するということなんじゃないかとおもうんですよ。この句でいえば、わたしは包帯をほどく気はなかったかもしれない。でも、ほどかれてしまった。意想外だったかもしれないですよね。ちなみにYさんは「花畑の中で」って、どんなかんじがしますか。
Y そうですね。らんらん、かな。らんらんるー。らんらんるー、かな。あとは、なんだろう、るるる、かな。るるるらんらんるー、かな。らんらんるー、らんら
M はい、はい、もうだいじょうぶです。「花畑の中」ってたいていたのしいことですよね。開放感があるはずなんです。だから、この包帯をほどくことに開放感があるはずなんです。でもなんかうしろめたかったり、こわかったりしませんか。
Y やっぱりそれは包帯でしょうか。包帯をほどくしゅんかんって、開放感っていうよりもむしろ、こわいですよね。治ってるかどうかわからないし、隠されていた皮膚や身体が他者のような気もするから。
M そうなんですよね、包帯って身体をある意味、隠蔽・掩蔽しつづけるってことなんですよ。だから、じぶんのからだを、他者化することでもある。包帯をほどくって、じぶんの身体に再会するってことでもありますよね。
Y だから包帯をほどくときってこわさみたいなものがあるのかあ。
M あのヱヴァンゲリヲンで綾波レイという方が包帯だらけだったんですが、あれもひとつの身体の抑圧になっているのではないかとおもうんですよね。
Y でもほどいたのが花畑だったってことは、その抑圧が一気に開花して昇華して吹き荒れ、咲き荒れるような状況にあったってことですか。
M しかも、それが他者の手を介して行われるってことですよね。
Y じゃあ、たとえば怪物でミイラ男もいるけれど、あれはひとつの身体の抑圧としてみてもいいんですか。
M たぶん、モンスターってひとつの身体論なんじゃないかとおもうんですよね。フランケンシュタインの怪物もつぎはぎの身体が自らの身体として身体化できない抑圧、たとえばドラキュラやゾンビなんかも他者の身体をつねに希求しつづけなければ〈生き〉てはいけない点で、身体コンプレックスを抱いているとおもうんです。身体の自足ができていないってことです。
Y 身体の自給自足かあ。ホラー映画って身体のショッピングセンターみたいなところがあるかもしれませんね。身体のIKEAみたいな。
M それはないな。
Y !?
M そういうたとえは、ない。
Y ……。
(ゆっくりと、ひかりがほどかれるように、暗転)
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