【短歌】日経新聞・日経歌壇2015年4月12日 穂村弘 選
- 2015/04/12
- 06:39
これですか? ええ。これですよね。
これ、いつも抱いてるやつですね。
うなされるたびに出てくる。部屋のまんなかで浮かんでることもあるし、枕元にどっしりとたたずんでいることとも、ある。
それを、抱き寄せて、抱くわけです。
罪悪感? 罪悪感とかはないです。なんど抱いても罪の意識はうまれません。
ただ──おおきすぎるな、とはおもう。
ちょっとこれおおきすぎるよね、と。
でもたぶんおおきすぎるのを抱くのがすきなんでしょう。むこうも、抱かれながら、ちいさすぎるやつとおもってるかもしれない。
でも抱いてるあいだは、もうろうとしてるから、きほんてきにはよくわからないんです。もうろうとしてるなかに、すごい黄色が流れたりしてる。すさまじい黄色だよねってうなされながら、おもう。おもう、というより、動詞としては〈感じる〉を使いたいくらい、抱くことに没入してるかもしれません。もう、だいてるのかだかれてるのか、抱擁がひっちゃかめっちゃかになっていくかんじがして、よくわからなくなったりするんです。色がいりみだれて、カラフルな急流のなかで、ひっしになって抱きしめているかんじなんです。
じぶんがじぶんとしてさえ、わからなく、なる。
でも──それでも抱く。だきつづけている。だこうと、する。
きっといつか、なにかがわかって、ゆめからさめるように、どこかに、たった一色の青色みたいになって、いずれかの場所には、たどりつけるきがしているから。
おっと、眩暈です。
それでも
高熱の俺が懸命に抱いている冬のひまわり(おおきすぎるやつ) 柳本々々
(日経新聞・日経歌壇2015年4月12日 穂村弘 選)
これ、いつも抱いてるやつですね。
うなされるたびに出てくる。部屋のまんなかで浮かんでることもあるし、枕元にどっしりとたたずんでいることとも、ある。
それを、抱き寄せて、抱くわけです。
罪悪感? 罪悪感とかはないです。なんど抱いても罪の意識はうまれません。
ただ──おおきすぎるな、とはおもう。
ちょっとこれおおきすぎるよね、と。
でもたぶんおおきすぎるのを抱くのがすきなんでしょう。むこうも、抱かれながら、ちいさすぎるやつとおもってるかもしれない。
でも抱いてるあいだは、もうろうとしてるから、きほんてきにはよくわからないんです。もうろうとしてるなかに、すごい黄色が流れたりしてる。すさまじい黄色だよねってうなされながら、おもう。おもう、というより、動詞としては〈感じる〉を使いたいくらい、抱くことに没入してるかもしれません。もう、だいてるのかだかれてるのか、抱擁がひっちゃかめっちゃかになっていくかんじがして、よくわからなくなったりするんです。色がいりみだれて、カラフルな急流のなかで、ひっしになって抱きしめているかんじなんです。
じぶんがじぶんとしてさえ、わからなく、なる。
でも──それでも抱く。だきつづけている。だこうと、する。
きっといつか、なにかがわかって、ゆめからさめるように、どこかに、たった一色の青色みたいになって、いずれかの場所には、たどりつけるきがしているから。
おっと、眩暈です。
それでも
高熱の俺が懸命に抱いている冬のひまわり(おおきすぎるやつ) 柳本々々
(日経新聞・日経歌壇2015年4月12日 穂村弘 選)
- 関連記事
スポンサーサイト
- テーマ:短歌
- ジャンル:小説・文学
- カテゴリ:々々の短歌