【短歌】背中って…(日経新聞・日経歌壇・2015年5月10日 穂村弘 選)
- 2015/05/10
- 21:12
背中って広い草原みたいだね 高熱の俺に妖精が云う 柳本々々
(日経新聞・日経歌壇・2015年5月10日 穂村弘 選)
【ひかりまみれのせなか】
わたしのからだの知らないからだの部位だけが異次元につながってる、つながることができるんじゃないかなとおもっていることがある。
わたしはわたし以外の背中をたくさん知ってきたが、わたしはわたしの背中をしらない。
わたしのからだだけれどわたしはわたしの背中をしらないので、だからもし思いがけなくワープすることがあるとするなら、背中からなんじゃないかなとおもうこともある。
背中から、はいっていく。
ああこのときのために背中ってあったんですか、とわたしはおもう。
なぜかは、わからない。
ワープ基礎演習の本にも、かならず、背中からワープするように、と書いてある。
でも、だって、そうじゃないか、とワープの講師がいう。
時空を超えて頭からあなたがとつぜん出てきたら平安時代のひとたちが、びっくりしちゃうだろ。
背中からワープしてきたら、なんとなく、したしみがわくよ。背中だけはなんだかひとって未来形になれないから。
ああそうか、ってわたしはおもって、ノートに書き取る。ワープするときは背中から。過去のみんなをおどろかさないように。ひかりまみれで。
*
朝の陽にまみれてみえなくなりそうなおまえを足で起こす日曜 穂村弘
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