【短歌・連作】「赤い彗星」『かばん』2015年5月号掲載作
- 2015/05/12
- 20:16
【詞書】一人の人間が全ての意思の代弁者になることはできない。器にでもならない限り。 フル・フロンタル
赤に乗り「どうということはない」というモビルスーツは定型だから
フロンタル、器のようなものですと裸の君は彗星になる
メビウスの終わらない輪だコロニーがゆっくり落ちて時間がみえる
「史実では」シャア・アズナブルはそういって匣をひらいてクワトロになる
直感でぼくらは理解しあえても置き去りにされる宇宙の身体
∀(いっさい)のひとの総意をひきうけて亡霊になる 足なんて飾り
髭つきのガンダム、虹色の未来 前方を見ろフラミンゴの群だ
ときどきは思い出してねララァ・スンまたはすべてのおかあさんたちを
柳本々々「赤い彗星」
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【添え書きの花園】
『逆襲のシャア』でシャアが「ララァは私のお母さんになってくれるかも知れなかった人だ」と吐露するんですが、色んな違う女の人と付き合いながらも十年以上もララァのことをずっと考えていたんだなと思うと、ガンダム史って片想いの歴史なんだよなあとも思いました。
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本号にて野川忍さんから歌評をいただきました。ありがとうございました!
『かみさま』
セックスの神様などと呼ばれてる男優がきて嗤う秋葉原 柳本々々
とてもコミカルで、かみさまというひらがなで表された対象の正体が透けて見えるような一首。しかし、セックスの神様などと呼ばれる男優は秋葉原とは無縁ではないのか。 野川忍「三月号評」
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音符にはチョコレート色のしみがありふわっと浮いて空に向かった 野川忍
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今月号の表紙絵は、東直子さんの「こもれびミーアキャット」です。
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