【感想】寝た者から順に明日を配るから各自わくわくしておくように 佐伯紺
- 2015/05/23
- 01:10
寝た者から順に明日を配るから各自わくわくしておくように 佐伯紺
【わくわくするものにわくわくしてみよう、すきなものをすきだといってみよう】
Y 佐伯さんの一首です。すごくすてきな短歌ですよね。はじめてみたとき、わくわくしました。
M すてきな点のひとつに「明日」が物質化されているということがあると思うんです。「明日を配るから」って語られていますよね。よく決まり文句で「今日がどんな日だってそれでも明日はやってくる」ってことばがありますけれど、この語り手にとって明日ってそういう身勝手なものじゃないんですよ。わたしがじぶんで眠ることによって贈られるものなんですよ。わたしが〈受け取る〉ものなんです。
Y ということはこの初句の「寝た者から」っていうのが大事なんだっていうことですよね。ちゃんと自分で寝ること、明日への能動主体にナルことによって、明日を受け取るわけですよね。明日はやってくるものではなくて、ちゃんと寝ないと受け取れないから。
M でもさらにまた大事なのがじぶんが寝る主体として能動主体になっても、そこで明日を奪い取るのではなくて、配られたものを受けとるってことですよね。つまり、能動主体から受動主体へ移行していく過程がある。ひとりよがりじゃないんです。じぶんがアクションを起こすと、他者がアクションを起こすというそういうアクションの相関関係がこの歌にはちゃんとある。その他者はかみさまかもしれないし、世界かもしれないけれど、ともかくここにはアクションの主体が移ろう過程がある。
Y あの、この、「わくわく」っていうのもいいですよね。「わくわくしておくように」っていわれたら、それはもう「いいもの」に決まっているじゃないですか。これは、うれしいですよ。だって、たとえば仕事おわって帰るとき、やぎもとくん明日はわくわくしておくように、ってふっと肩に手をかけられたら、それこそ帰り道スキップしながら、ミュージカルのように歌いながら帰るじゃないですか。
M そうですね。わくわくすることって大事ですからね。そのわくわくが毎日やってくるんだって教えてくれるのがこの歌のすごくすてきなところですよね。そしてそのわくわくは〈だれもが〉享受できるてんも。
Y わたしこないだ、大阪でふくふくふという蒸しパンのようなお菓子をいただいて、真夜中に罪をおかす感じでひとつ食べてみたらすごくおいしかったんで、わくわくしてどきどきしながら連続してもういっこ深夜なのに食べてみたんですが、やはりちょっとわくわくしてしまって、もういっこ食べてしまいました。それからわくわくしたので、わくわくついでにもうひとつ。
M わくわくついでなんて、ないですよ。
Y こんなに真夜中にたべてしまって、すきなものはすきなんだなあとおもったんです。ペコちゃんのほっぺをショーウィンドーでみかけるといまだに立ち止まってしまいますからね、『フランダースの犬』のルーベンスの絵にあこがれるネロみたいに。
M そう。
帰る場所などなくていいあちこちでみんなが好きと叫んでまわる 佐伯紺
参考画像①
参考画像②
【わくわくするものにわくわくしてみよう、すきなものをすきだといってみよう】
Y 佐伯さんの一首です。すごくすてきな短歌ですよね。はじめてみたとき、わくわくしました。
M すてきな点のひとつに「明日」が物質化されているということがあると思うんです。「明日を配るから」って語られていますよね。よく決まり文句で「今日がどんな日だってそれでも明日はやってくる」ってことばがありますけれど、この語り手にとって明日ってそういう身勝手なものじゃないんですよ。わたしがじぶんで眠ることによって贈られるものなんですよ。わたしが〈受け取る〉ものなんです。
Y ということはこの初句の「寝た者から」っていうのが大事なんだっていうことですよね。ちゃんと自分で寝ること、明日への能動主体にナルことによって、明日を受け取るわけですよね。明日はやってくるものではなくて、ちゃんと寝ないと受け取れないから。
M でもさらにまた大事なのがじぶんが寝る主体として能動主体になっても、そこで明日を奪い取るのではなくて、配られたものを受けとるってことですよね。つまり、能動主体から受動主体へ移行していく過程がある。ひとりよがりじゃないんです。じぶんがアクションを起こすと、他者がアクションを起こすというそういうアクションの相関関係がこの歌にはちゃんとある。その他者はかみさまかもしれないし、世界かもしれないけれど、ともかくここにはアクションの主体が移ろう過程がある。
Y あの、この、「わくわく」っていうのもいいですよね。「わくわくしておくように」っていわれたら、それはもう「いいもの」に決まっているじゃないですか。これは、うれしいですよ。だって、たとえば仕事おわって帰るとき、やぎもとくん明日はわくわくしておくように、ってふっと肩に手をかけられたら、それこそ帰り道スキップしながら、ミュージカルのように歌いながら帰るじゃないですか。
M そうですね。わくわくすることって大事ですからね。そのわくわくが毎日やってくるんだって教えてくれるのがこの歌のすごくすてきなところですよね。そしてそのわくわくは〈だれもが〉享受できるてんも。
Y わたしこないだ、大阪でふくふくふという蒸しパンのようなお菓子をいただいて、真夜中に罪をおかす感じでひとつ食べてみたらすごくおいしかったんで、わくわくしてどきどきしながら連続してもういっこ深夜なのに食べてみたんですが、やはりちょっとわくわくしてしまって、もういっこ食べてしまいました。それからわくわくしたので、わくわくついでにもうひとつ。
M わくわくついでなんて、ないですよ。
Y こんなに真夜中にたべてしまって、すきなものはすきなんだなあとおもったんです。ペコちゃんのほっぺをショーウィンドーでみかけるといまだに立ち止まってしまいますからね、『フランダースの犬』のルーベンスの絵にあこがれるネロみたいに。
M そう。
帰る場所などなくていいあちこちでみんなが好きと叫んでまわる 佐伯紺
参考画像①
参考画像②
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