【詩】あたたかい眼鏡(「新人作品・入選・文月悠光選」『現代詩手帖』2015年6月号・掲載)
- 2015/05/28
- 14:19
いっけんすると
眼鏡女子や眼鏡男子の集合写真なのだけれども、
実はだれひとり眼鏡なんてかけていなくて、
眼鏡だけが霊体だったという、
眼鏡の幽霊の心霊写真がある
どう、
ときみがきくので
まあそういうこともあるかもしれないと
ばたばたするめがねをおさえながら いう
やわらかく、なまぐさい、ぼくときみの
きょうゆうしているめがね
きのうキッチンで真夜中、冷蔵庫のまえの
床にぺたりと座って、トマトジュースをのんでいたら
眼鏡の霊がリビングにぼんやりたって
こっちを眺めているのをみていたよ
だからそういこともあるんだなっていうのが
わかった
そう
ぼくたちの生活はたぶん
そんなにはながくつづけられはしなくて
それでも眼鏡だけがかたくゆるくあたたかく
のこっていくのはなんとなく
いつもわかっていること
ねえきみは
なに?
柳本々々「あたたかい眼鏡」(「新人作品・入選・文月悠光選」『現代詩手帖』2015年6月号・掲載)
選者の文月悠光さんから次の選評もいただきました。ありがとうございました!
「あたたかい眼鏡」は、モチーフの魅力を大きく引き出している。眼鏡を囲むフレームや、フィルター機能、身に着けるものなのに、身体からは不思議と浮いているところ。それが〈きみ〉との関係性にうまく重なっている。詳しく説明されなくても、確かに、と納得させられる力がある。こうした説得力は大事だ。
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