【短歌連作】「にんげんのことば」『かばん』2013年12月号
- 2015/06/01
- 18:32
にんげんのことばをならべ泣かないでわらいもしない春夏秋冬
声だけが夏のてがみに浮いていた 背泳ぎで知る きみは重力
まがりきてあなたがいない雨が降るあふれるかどがこれからの傘
並びしなきみをかすめたぼくの手でなめらかに咲く満身創痍
喪服着てあるきだしてる春の道サンドイッチをほおばる生きて
本棚の裏側みればまだ触れぬ言葉が座るひとがたである
荻原と萩原の間の真空に柳本(やぎもと)としてわれはたたずむ
蜂蜜を比喩にはせずに出かけようジャングルジムを溶かす糖度で
柳本々々「にんげんのことば」『かばん』2013年12月号
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サカイミチカさんと杉山モナミさんから本号にて次の歌評をいただきました。ありがとうございました!
手付かずの遊園地から笑い声 ああおかえりね うんさようなら 柳本々々
手に余るほどの空虚に満ちた連作。手つかずの遊園地で思い浮かべたのが、遊園地の廃墟。家族連れの会話が、遊具の動かなくなった今でもなお聞こえてくるようです。 サカイミチカ「はじめての十月号評」
吸血鬼最新式の冷蔵庫きみの涙は花でできてる 柳本々々
強力なつまさきからずしんとくる魔法だきみのゆびさきのこと 〃
新メンバーの柳本々々さんの、この一連は花いっぱい。けっこう〈書き散らされた感〉がただよっている。そこに、ちょっと独特な手描きの筆圧も感じられるみたいなのはなぜか。最後の一首の、「ずしんとくる」感じのため?しばしば、うたの第三句字余りの破調のあたりには、オオカミ(野生/神的生命)は棲んでいて睨みをきかせます。 杉山モナミ「『かばん』十月号ノート」
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濾紙に集う琥珀の真円が極大となる今会いたいよ サカイミチカ
付箋ってオドロキのまえの谷間 オドロキそのものじゃないのね 杉山モナミ
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