【こわい川柳 第九話】いつか死ぬあす死ぬきのう死んでいる 佐藤みさ子
- 2015/06/07
- 12:51
いつか死ぬあす死ぬきのう死んでいる 佐藤みさ子
【17音のシックスセンス】
佐藤みさ子さんの〈こわい〉一句です。
あの、さいきん思うのは、〈定型がもたらしてしまった気づき〉ってあるんじゃないかとおもうんですね。
定型さえなければ気づかなかったのに、定型があったからわたしはこんなことに気づいてしまった、定型がにくい・こわい、というような。
川柳は〈こわい〉んだけれども、そもそも定型がこわいものである。
それはわたしがふだん考えもしなかった知のありようを運んでくるからです。
で、みさ子さんの句です。
「いつか死ぬ」。
これは定型の知ではありません。
ふだんみんな暮らしながら・生きながら、ぼんやりと〈いつか死ぬ〉んだろうなあ、とかんがえているところです。
でも、ここからが定型の知なんです。
「あす死ぬきのう」。
7音だから、〈こう〉入れるしかなかった。「あす死ぬ」のあとに7音なので「きのう」も入ってきます。また定型詩なので、「死ぬ」を反復させる〈知〉も手に入れてしまった。「死ぬ」をリフレインさせながら、7音だったので「きのう」も呼び込んでいきます。
「きのう」を呼び込んでしまったのではあとは
「死んでいる」と、
入れるしかなかった。
このとき、語り手は気が付くんです、定型によって。「きのう死んでい」たことに。
これは17音後に気が付く、〈死後のじぶん〉です。17音目までは〈生前〉なんです。ところが17音で、きづく。17音の『シックスセンス』です。
語り手がたった17音で、しかし17音だったからこそ、〈生前〉から〈死後〉へと変転してしまったように、定型っていうのはそういうじぶんがふだん気づきもしなかった〈知〉を運んでくるものではないかとおもうんです。
だから、こわい。
川柳は、こわい。
でも、もっとこわいのは、
定型が、こわい。
なぜなら、ふだんじぶんが思ってもいないようなことをいってしまうから。たとえば、
深いかと聞いた溺れている人に 佐藤みさ子
【17音のシックスセンス】
佐藤みさ子さんの〈こわい〉一句です。
あの、さいきん思うのは、〈定型がもたらしてしまった気づき〉ってあるんじゃないかとおもうんですね。
定型さえなければ気づかなかったのに、定型があったからわたしはこんなことに気づいてしまった、定型がにくい・こわい、というような。
川柳は〈こわい〉んだけれども、そもそも定型がこわいものである。
それはわたしがふだん考えもしなかった知のありようを運んでくるからです。
で、みさ子さんの句です。
「いつか死ぬ」。
これは定型の知ではありません。
ふだんみんな暮らしながら・生きながら、ぼんやりと〈いつか死ぬ〉んだろうなあ、とかんがえているところです。
でも、ここからが定型の知なんです。
「あす死ぬきのう」。
7音だから、〈こう〉入れるしかなかった。「あす死ぬ」のあとに7音なので「きのう」も入ってきます。また定型詩なので、「死ぬ」を反復させる〈知〉も手に入れてしまった。「死ぬ」をリフレインさせながら、7音だったので「きのう」も呼び込んでいきます。
「きのう」を呼び込んでしまったのではあとは
「死んでいる」と、
入れるしかなかった。
このとき、語り手は気が付くんです、定型によって。「きのう死んでい」たことに。
これは17音後に気が付く、〈死後のじぶん〉です。17音目までは〈生前〉なんです。ところが17音で、きづく。17音の『シックスセンス』です。
語り手がたった17音で、しかし17音だったからこそ、〈生前〉から〈死後〉へと変転してしまったように、定型っていうのはそういうじぶんがふだん気づきもしなかった〈知〉を運んでくるものではないかとおもうんです。
だから、こわい。
川柳は、こわい。
でも、もっとこわいのは、
定型が、こわい。
なぜなら、ふだんじぶんが思ってもいないようなことをいってしまうから。たとえば、
深いかと聞いた溺れている人に 佐藤みさ子
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