【こわい川柳 第十一話】 身の置き場なくて鴨居にぶらさがる 丸山進
- 2015/06/08
- 12:28
身の置き場なくて鴨居にぶらさがる 丸山進
【たまには、ぶらさがろう。】
丸山さんの『アルバトロス』からの一句です。
ティム・バートンの〈生きてる人間を退治する〉バイオエクソシスト・ホラーコメディ映画『ビートルジュース』に〈轢かれた男〉というのが出てくるんですよ。
で、彼は霊界のオフィスでぶらさがったままフロアをかけめぐりながら書類をあちこちのデスクに配るのが仕事なんです。
ただ裏を返せばそれしか身体的にはもうできないんですね(そこがホラーコメディの笑いの箇所になってきます)。
で、〈ぶらさがる〉というアクションはそんなふうにですね、ひとのふだんの行為をすべてはぎ取ってしまう〈姿態〉なんです。
しかもこの丸山さんの句、「鴨居にぶらさが」ってます。障子とかの上の部分ですが、なかなか「ぶらさがる」のにむずかしいところです。「身の置き場なくて」だから、よっぽどのことだったんだとおもいます、よっぽど「身の置き場」もないんだけれど、〈こわい〉のは、にもかかわらず、「鴨居にぶらさが」ってまで〈そこにいたい〉んだという語り手の〈この場所しかないんだ〉という欲望の過剰性です。
そこがこの川柳のひとつの〈こわい〉おもしろいポイントになっているんじゃないかとおもいます。
川柳は、〈ありない場所に置かれるからだ〉をいつもさがしています。ありえないパンダなんかも含めて。
灰色になって休んでいるパンダ 丸山進
【たまには、ぶらさがろう。】
丸山さんの『アルバトロス』からの一句です。
ティム・バートンの〈生きてる人間を退治する〉バイオエクソシスト・ホラーコメディ映画『ビートルジュース』に〈轢かれた男〉というのが出てくるんですよ。
で、彼は霊界のオフィスでぶらさがったままフロアをかけめぐりながら書類をあちこちのデスクに配るのが仕事なんです。
ただ裏を返せばそれしか身体的にはもうできないんですね(そこがホラーコメディの笑いの箇所になってきます)。
で、〈ぶらさがる〉というアクションはそんなふうにですね、ひとのふだんの行為をすべてはぎ取ってしまう〈姿態〉なんです。
しかもこの丸山さんの句、「鴨居にぶらさが」ってます。障子とかの上の部分ですが、なかなか「ぶらさがる」のにむずかしいところです。「身の置き場なくて」だから、よっぽどのことだったんだとおもいます、よっぽど「身の置き場」もないんだけれど、〈こわい〉のは、にもかかわらず、「鴨居にぶらさが」ってまで〈そこにいたい〉んだという語り手の〈この場所しかないんだ〉という欲望の過剰性です。
そこがこの川柳のひとつの〈こわい〉おもしろいポイントになっているんじゃないかとおもいます。
川柳は、〈ありない場所に置かれるからだ〉をいつもさがしています。ありえないパンダなんかも含めて。
灰色になって休んでいるパンダ 丸山進
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