【こわい川柳 第十二話】 ネコバスで走る運動会の真ん中 今井和子
- 2015/06/08
- 13:00
ネコバスで走る運動会の真ん中 今井和子
【きょうの相談は「走り始めちゃった猫バスはどうやって降りればいいんですか?」という浪人生の方からのお葉書】
今井さんの句集『象と出会って』からの一句です。
これ、〈こわい〉のはですね、「運動会の真ん中」を走れてしまっていることだと、おもうんです。
「運動会」っていうのは、無数のひとびとがめいめいのアクションをしながらひとつの巨大なエネルギーをつくっている非常に混沌としたカオスなエネルギーの場だとおもうんですが、それを〈難なく〉つっきってしまう。
で、それは「ネコバス」が〈別次元〉の存在で、それに乗っている語り手もまた〈別次元〉の存在になっているからだとおもうんです。
『となりのトトロ』の都市伝説でもよくいわれていることですが、「ネコバス」は世界の物理法則を無視しているために、どうも〈死〉とも関係があるらしい、ということも、猫バスにもし乗る機会があれば、おもうかもしれない。というか、わたし、いま、〈あの世〉なんじゃないかと、運動会のまんなかを走りながら、おもうことだって、あるとおもうんです。
ところが、この今井さんの句でおもしろいのは、たとえわたしがいまあの世だとしても、〈走〉ってるよね、という事実です。「運動会」のひとたちとはちがう次元の〈走行〉かもしれないけれど、とりあえず「ネコバス」に乗って走っているのです。つまり、ある意味においては、ひじょうに〈いきいき〉している。
だから、たとえ次元が別だったとしても、通い合ってしまうことはある。次元と次元が、あるアクションや勢いやエネルギーによって。
だから、猫バスにたとえもし〈降りますボタン〉がついていなくても、心配はない。〈走りつづければ・乗りつづければ〉どこかで〈抜け目/破れ目〉は出てくるのだから。
やぶけたところのこの世のじかん零れだす 今井和子
【きょうの相談は「走り始めちゃった猫バスはどうやって降りればいいんですか?」という浪人生の方からのお葉書】
今井さんの句集『象と出会って』からの一句です。
これ、〈こわい〉のはですね、「運動会の真ん中」を走れてしまっていることだと、おもうんです。
「運動会」っていうのは、無数のひとびとがめいめいのアクションをしながらひとつの巨大なエネルギーをつくっている非常に混沌としたカオスなエネルギーの場だとおもうんですが、それを〈難なく〉つっきってしまう。
で、それは「ネコバス」が〈別次元〉の存在で、それに乗っている語り手もまた〈別次元〉の存在になっているからだとおもうんです。
『となりのトトロ』の都市伝説でもよくいわれていることですが、「ネコバス」は世界の物理法則を無視しているために、どうも〈死〉とも関係があるらしい、ということも、猫バスにもし乗る機会があれば、おもうかもしれない。というか、わたし、いま、〈あの世〉なんじゃないかと、運動会のまんなかを走りながら、おもうことだって、あるとおもうんです。
ところが、この今井さんの句でおもしろいのは、たとえわたしがいまあの世だとしても、〈走〉ってるよね、という事実です。「運動会」のひとたちとはちがう次元の〈走行〉かもしれないけれど、とりあえず「ネコバス」に乗って走っているのです。つまり、ある意味においては、ひじょうに〈いきいき〉している。
だから、たとえ次元が別だったとしても、通い合ってしまうことはある。次元と次元が、あるアクションや勢いやエネルギーによって。
だから、猫バスにたとえもし〈降りますボタン〉がついていなくても、心配はない。〈走りつづければ・乗りつづければ〉どこかで〈抜け目/破れ目〉は出てくるのだから。
やぶけたところのこの世のじかん零れだす 今井和子
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