【こわい川柳 第十三話】鳥の素顔を見てはいけない 小池正博
- 2015/06/08
- 13:15
鳥の素顔を見てはいけない 小池正博
【14音の鶴(素顔)の恩返し】
この小池さんの鳥の句なんですが、いくつか〈こわい〉ポイントがあるとおもいます。
まず、ひとつめに語り手が鳥の「顔」と「素顔」を分けたことです。
ふつうひとは動物の「素顔」についてあまり思いをめぐらしません。とくに鳥は〈くちびる〉をもたず、眼も小さい表情に乏しい動物なので、そもそもが〈顔〉に言及されにくいとおもうんですね。
ところが語り手は鳥の「顔」に着目するばかりか、その「顔」を「顔/素顔」に分けてしまった。
〈鳥の素顔〉の発見です。
ところがそこから先がまた〈こわい〉です。
じぶんで〈見つけた〉素顔にもかかわらず、こんどは「見てはいけない」と語るわけです。
つまりこの句は、読者がまず〈鳥の素顔〉を〈見つけさせられ〉、その直後に〈見つけたその行為〉そのものを〈見てはいけない〉と禁じられる七七の句になっています。
たった14音で、素顔の〈譲渡と禁忌〉が読者に手渡されます。
この句を読まなければ、そもそもがだれも〈鳥の素顔〉にきづかないんです。
だから、ひとつたしかなかたちでいえることはこういうことです。
この句をそもそも読んではいけない。
蟻の列わが貌たしかに存在す 加藤楸邨
【14音の鶴(素顔)の恩返し】
この小池さんの鳥の句なんですが、いくつか〈こわい〉ポイントがあるとおもいます。
まず、ひとつめに語り手が鳥の「顔」と「素顔」を分けたことです。
ふつうひとは動物の「素顔」についてあまり思いをめぐらしません。とくに鳥は〈くちびる〉をもたず、眼も小さい表情に乏しい動物なので、そもそもが〈顔〉に言及されにくいとおもうんですね。
ところが語り手は鳥の「顔」に着目するばかりか、その「顔」を「顔/素顔」に分けてしまった。
〈鳥の素顔〉の発見です。
ところがそこから先がまた〈こわい〉です。
じぶんで〈見つけた〉素顔にもかかわらず、こんどは「見てはいけない」と語るわけです。
つまりこの句は、読者がまず〈鳥の素顔〉を〈見つけさせられ〉、その直後に〈見つけたその行為〉そのものを〈見てはいけない〉と禁じられる七七の句になっています。
たった14音で、素顔の〈譲渡と禁忌〉が読者に手渡されます。
この句を読まなければ、そもそもがだれも〈鳥の素顔〉にきづかないんです。
だから、ひとつたしかなかたちでいえることはこういうことです。
この句をそもそも読んではいけない。
蟻の列わが貌たしかに存在す 加藤楸邨
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