【感想】「けれども」がぼうぼうぼうと建っている 佐藤みさ子
- 2015/06/09
- 12:05
「けれども」がぼうぼうぼうと建っている 佐藤みさ子
【となりのケレドモ】
すごくインパクトがある句です。
「けれども」が〈建っている〉とあるので、〈ことば〉がまずモノのように〈物質化〉している点も大きいとおもうんです。
また〈立つ〉ではなく、〈建つ〉という違いも、おおきい。
〈立つ〉だとその場に「けれども」が直立しているだけなんですが、〈建つ〉と表現されることによって、ビルディングのように〈構造的〉にその場に〈建って〉いるんだということがわかります。
つまり、「けれども」はただたんに立っているわけじゃなくて、複雑な構造体としてその場に「建っている」わけです。
ということは、どういうことか。
ということはですよ、容易に打ち壊せないんですよ。
立っているだけなら、思いっきりぶつかって押し倒してもいいかもしれない。
でも、建物がそんなことをしても壊れないように、〈建造物〉としての「けれども」はそんなことじゃ壊れない。
しかも。
「ぼうぼうぼうと」建っているんです。
がっちりや、ばあんや、ででんと建っているわけではないんです。
つまりどうも、〈やわらか〉そうなんです。
「ぼう」というのは、〈茫洋(ぼうよう)〉な感じを与えますよね。ぼうっと建っているかんじです。
つまり、この句、「けれども」を動詞で構造的な堅固なありようをみせながら、それを擬音でやわらかくしている、おそろしい「けれども」を提示しているんです。
句じしんが、逆説と、「けれども」と向き合っているわけです。
〈建つ〉といえば、谷川俊太郎さんにこんな短歌があります。
建物はいつもかすかにゆれている そのことだけに気がついている 谷川俊太郎
逆説は、こんなふうに、かたく、やわらかく、いきているんです。
そして「このへんないきものは まだ日本にいるのです。たぶん。」
風になびいたかたち「だけど」がとんがって 今井和子
糸井重里は、最初『となりのトトロ』のコピーを「このへんないきものは、もう日本にいないんです。たぶん」と書いたが、宮崎がこれを「このへんないきものは、まだ日本にいるのです。たぶん」に変えてくれ、と要望したという。
杉田俊介『宮崎駿論』
【となりのケレドモ】
すごくインパクトがある句です。
「けれども」が〈建っている〉とあるので、〈ことば〉がまずモノのように〈物質化〉している点も大きいとおもうんです。
また〈立つ〉ではなく、〈建つ〉という違いも、おおきい。
〈立つ〉だとその場に「けれども」が直立しているだけなんですが、〈建つ〉と表現されることによって、ビルディングのように〈構造的〉にその場に〈建って〉いるんだということがわかります。
つまり、「けれども」はただたんに立っているわけじゃなくて、複雑な構造体としてその場に「建っている」わけです。
ということは、どういうことか。
ということはですよ、容易に打ち壊せないんですよ。
立っているだけなら、思いっきりぶつかって押し倒してもいいかもしれない。
でも、建物がそんなことをしても壊れないように、〈建造物〉としての「けれども」はそんなことじゃ壊れない。
しかも。
「ぼうぼうぼうと」建っているんです。
がっちりや、ばあんや、ででんと建っているわけではないんです。
つまりどうも、〈やわらか〉そうなんです。
「ぼう」というのは、〈茫洋(ぼうよう)〉な感じを与えますよね。ぼうっと建っているかんじです。
つまり、この句、「けれども」を動詞で構造的な堅固なありようをみせながら、それを擬音でやわらかくしている、おそろしい「けれども」を提示しているんです。
句じしんが、逆説と、「けれども」と向き合っているわけです。
〈建つ〉といえば、谷川俊太郎さんにこんな短歌があります。
建物はいつもかすかにゆれている そのことだけに気がついている 谷川俊太郎
逆説は、こんなふうに、かたく、やわらかく、いきているんです。
そして「このへんないきものは まだ日本にいるのです。たぶん。」
風になびいたかたち「だけど」がとんがって 今井和子
糸井重里は、最初『となりのトトロ』のコピーを「このへんないきものは、もう日本にいないんです。たぶん」と書いたが、宮崎がこれを「このへんないきものは、まだ日本にいるのです。たぶん」に変えてくれ、と要望したという。
杉田俊介『宮崎駿論』
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