【感想】淋しくて国民になるバナナかな 岡村知昭
- 2015/06/09
- 18:00
淋しくて国民になるバナナかな 岡村知昭
【魔法とバナナと奇蹟の冒険】
岡村さんのこの句は俳句なんですが、この岡村さんの句とこれからご紹介するバナナの川柳に共通している点に、どうも17音のなかではバナナはマジカルな食べ物らしいということがあるようなんです。
岡村さんの句では「バナナ」が「国民にな」り、ナショナリティをもっていく過程が語られていますが、上五の「淋しくて」にあるように、バナナの〈内面〉もまた語られているのが特徴的です。
バナナの国民国家とは、〈淋しい共同体〉なんですね。
ただこれはけっこう大事なことで、おそらく〈国民国家〉はある一定の〈感情を共有する〉ことによってつくられた〈想像の共同体〉かもしれないので、もしバナナにも〈内面〉があるのであれば、〈国民国家〉をつくれるようにも、おもいます。
で、バナナが国民になれてしまうというマジカルな句だったんですが、こんなバナナ川柳があります。
大抵のことはバナナでケリが着く 丸山進
作劇の用語で、「デウス・エクス・マキナ(機械仕掛けの神)」ということばがあります。
これはどんなに物語の大風呂敷をひろげても、物語の伏線がいっしゅんで解決してしまう〈最強の仕掛け〉です。
たとえば、水戸黄門が印籠を出すのもそうだし、おそらくはウルトラマンが変身するのもそうです。古畑任三郎で、暗くなってひとりがたりからCMに入るのもそうかもしれません。それが出てくると一気に物語は収束し、解決にむかいます。
で、この丸山さんの「バナナ」はそうした〈絶対神〉のような存在として君臨している。ただおもしろいのは、「大抵のこと」なので、バナナでけりがつかない場合もある。そういう〈余地〉を残しているところ、バナナにマジカルな聖性を与えつつ、しかしそれでもバナナの不完全性を語り残しておくところにもこの句のおもしろさがあるようにおもいます。
もちろん以前紹介したこんなバナナ川柳も、〈マジカルなバナナ〉としての要素をふんだんにもっています。「淋しくて」「わけあって」という〈理由〉や〈根拠〉をもちながらも、無根拠性そのものとして体現されるのが、バナナです。
わけあってバナナの皮を持ち歩く 楢崎進弘
【魔法とバナナと奇蹟の冒険】
岡村さんのこの句は俳句なんですが、この岡村さんの句とこれからご紹介するバナナの川柳に共通している点に、どうも17音のなかではバナナはマジカルな食べ物らしいということがあるようなんです。
岡村さんの句では「バナナ」が「国民にな」り、ナショナリティをもっていく過程が語られていますが、上五の「淋しくて」にあるように、バナナの〈内面〉もまた語られているのが特徴的です。
バナナの国民国家とは、〈淋しい共同体〉なんですね。
ただこれはけっこう大事なことで、おそらく〈国民国家〉はある一定の〈感情を共有する〉ことによってつくられた〈想像の共同体〉かもしれないので、もしバナナにも〈内面〉があるのであれば、〈国民国家〉をつくれるようにも、おもいます。
で、バナナが国民になれてしまうというマジカルな句だったんですが、こんなバナナ川柳があります。
大抵のことはバナナでケリが着く 丸山進
作劇の用語で、「デウス・エクス・マキナ(機械仕掛けの神)」ということばがあります。
これはどんなに物語の大風呂敷をひろげても、物語の伏線がいっしゅんで解決してしまう〈最強の仕掛け〉です。
たとえば、水戸黄門が印籠を出すのもそうだし、おそらくはウルトラマンが変身するのもそうです。古畑任三郎で、暗くなってひとりがたりからCMに入るのもそうかもしれません。それが出てくると一気に物語は収束し、解決にむかいます。
で、この丸山さんの「バナナ」はそうした〈絶対神〉のような存在として君臨している。ただおもしろいのは、「大抵のこと」なので、バナナでけりがつかない場合もある。そういう〈余地〉を残しているところ、バナナにマジカルな聖性を与えつつ、しかしそれでもバナナの不完全性を語り残しておくところにもこの句のおもしろさがあるようにおもいます。
もちろん以前紹介したこんなバナナ川柳も、〈マジカルなバナナ〉としての要素をふんだんにもっています。「淋しくて」「わけあって」という〈理由〉や〈根拠〉をもちながらも、無根拠性そのものとして体現されるのが、バナナです。
わけあってバナナの皮を持ち歩く 楢崎進弘
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