【こわい川柳 第二十三話】かくれんぼとても上手でこわかった 妹尾凛
- 2015/06/12
- 12:00
一九八〇年から今までが範囲の時間かくれんぼです 穂村弘
かくれんぼとても上手でこわかった 妹尾凛
【かくれんぼのスペシャリストたちよ】
今回のこわいお話は、妹尾さんの一句です。
きのうちょっとハンカチ落としやかくれんぼっていうのは、非在と存在の遊び、ふっと消えることとふっとあらわれることの遊びだというふうにお話したんですが、この妹尾さんの句はまさに「かくれんぼ」そのものの句になっています。
ただ「かくれんぼ」をしているはずなのに、語り手はこわがっている。
なぜなんでしょう。
わたしが思うに、この句においては「かくれんぼ」の〈遊戯性〉が奪われてしまっているからじゃないかとおもうんですね。
「かくれんぼ」っていうのはあくまで〈遊び〉なんです。〈遊び〉っていうのは〈ゲーム〉なので、勝つことだけじゃなく負ける陶酔感、負ける快楽も入ってきます。〈勝負〉ではないので、〈負ける〉ことも込みで、遊びなわけです。ふいに負ける、ふいに逸脱してしまう快楽です。
ところがこの句で語り手がそう記述しているように、相手が「とても上手」だったんです。
これはどういうことかというと、「かくれんぼ」を遊びとして〈楽しんで〉やっているひとではなく、むしろ「かくれんぼ」を身体化し、「かくれんぼ」を生きようとしているひとです。
ここには〈遊び〉という離脱可能なかくれんぼの形態と、かくれんぼそのものを引き受けてしまいそれそのものを〈生〉としてしまっているものとの〈乖離〉があります。
形態が乖離しているのをふっと感じられたとき、かくれんぼのチャンネルがこのひとなんかちがうぞ、と感じられてしまったときに、そこには〈こわさ〉がでてきます。
そういえば短詩の世界には、かくれんぼのスペシャリストがいました。
かくれんぼ三つかぞえて冬となる 寺山修司
かくれんぼとても上手でこわかった 妹尾凛
【かくれんぼのスペシャリストたちよ】
今回のこわいお話は、妹尾さんの一句です。
きのうちょっとハンカチ落としやかくれんぼっていうのは、非在と存在の遊び、ふっと消えることとふっとあらわれることの遊びだというふうにお話したんですが、この妹尾さんの句はまさに「かくれんぼ」そのものの句になっています。
ただ「かくれんぼ」をしているはずなのに、語り手はこわがっている。
なぜなんでしょう。
わたしが思うに、この句においては「かくれんぼ」の〈遊戯性〉が奪われてしまっているからじゃないかとおもうんですね。
「かくれんぼ」っていうのはあくまで〈遊び〉なんです。〈遊び〉っていうのは〈ゲーム〉なので、勝つことだけじゃなく負ける陶酔感、負ける快楽も入ってきます。〈勝負〉ではないので、〈負ける〉ことも込みで、遊びなわけです。ふいに負ける、ふいに逸脱してしまう快楽です。
ところがこの句で語り手がそう記述しているように、相手が「とても上手」だったんです。
これはどういうことかというと、「かくれんぼ」を遊びとして〈楽しんで〉やっているひとではなく、むしろ「かくれんぼ」を身体化し、「かくれんぼ」を生きようとしているひとです。
ここには〈遊び〉という離脱可能なかくれんぼの形態と、かくれんぼそのものを引き受けてしまいそれそのものを〈生〉としてしまっているものとの〈乖離〉があります。
形態が乖離しているのをふっと感じられたとき、かくれんぼのチャンネルがこのひとなんかちがうぞ、と感じられてしまったときに、そこには〈こわさ〉がでてきます。
そういえば短詩の世界には、かくれんぼのスペシャリストがいました。
かくれんぼ三つかぞえて冬となる 寺山修司
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