【短歌連作】「東京日記」『かばん』2015年6月号
- 2015/06/15
- 20:43
【詞書】私の様な馴れない者には方角がわからない 内田百閒「東京日記」
すきなひとのすきなひとのはなしをきいている そのすきなひとにもすきなひとがいる
苗字など変わった君に電話してその凄まじさ、吹雪くモシモシ
迷彩のブラジャー着けたきみといてなにがなにをなにで隠したいのか
改札にオカモトのゴムが落ちていて5W1H誘う
薄暗い九割マスクの電車内〈#いますこしゆれた〉のタグばかりもつ
「拙者は」と主語が変わった渡辺がくさりがまを手にコンビニにいる
猫バスで降りる方法がわからずにまたたびをまく 高速に入る
バスのなかわたしの好きな馬場さんが撃たれたようにうつくしく寝る
柳本々々「東京日記」『かばん』2015年6月号
*
本号は藤本玲未さんの『オーロラのお針子』特集号だったのですが、玲未さんに短歌を投稿すると返歌してくださる企画があり、すてきな返歌をいただきました。藤本さん、ありがとうございました!
お題は、「水」でした。
日に三度ノックがあるのペンギンの滴るノックはぺちーのぺちーの 柳本々々
はい、いいえ、います、いません、ペンギンの剥製をおふろにつからせる 藤本玲未
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本号にて、乗倉寿明さんから歌評をいただきました。ありがとうございました!
さめ肌の恋人の首撫でている 羊のタトゥー、どこにゆきたいの? 柳本々々
愛の行き着く先。先ず俳句2つ『黥文はイデオロギーや片肌脱』(中村草田男) 『肌ぬぎやをとめは乳をそびえしむ』(日野草城)。短歌、『うら若き越後生まれのおいらんの冷たき肌を愛づる朝かな』(若山牧水) 『再びの薄暮至りて肌うすきあはれのなかに柘榴熟れゆく』(安永蕗子)。何処だらう? 乗倉寿明
*
【添え書きの園】
こないだ猫バスに乗ったのだが、叔父や母や兄やくろいひとやしろいひともいっしょに乗っているのが、わかった。どうやってこれ降りるんです、と私がいうと、しろいひとが、パウダーをゆっくりとまいて、しだいに、バスが、どんどんと、加速していくのがわかった。ぬるく、おびただしい、にゃあのなかで。
*
Tシャツの背中をめくり花束で殴り足りないわたしは何だ 藤本玲未
仮初めの日差し凝しき夏衣庭にそよ風ラムネが香る 乗倉寿明
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今月号の東直子さんの表紙絵です。
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