【感想】焼きみかん中途半端に人恋し 平井美智子
- 2015/06/16
- 13:00
焼きみかん中途半端に人恋し 平井美智子
【焼きみかんという感情】
今回の〈おいしい川柳〉は、平井さんの句集『なみだがとまるまで』からの一句です。
「焼きみかん」ってふしぎなたべものですよね。
ふだんみかんを焼きませんから、そもそも〈焼こう〉とおもったときに、通常の意識のモードとはちがうとおもうんですよね。
みかん焼こうかな、焼いてたべたいな、という意識。
で、その通常とは意識がちがうモードが恋愛感情にたくされていくのがこの句の〈おいしい〉ところだとおもうんですよ。
「中途半端に人恋し」というのがですね、たとえばリブロースステーキや霜降りの焼き肉やモッツァレラハンバーグやジューシーな厚切りハムのサンドイッチやそれを一気呵成に飲み干すストロングコーラなどの欲動がストレートにほとばしっている食べ物ではなくて、焼きみかんという、いったいじぶんの意識はどういうありようなんだっていう〈中途半端〉な所在ない感じをだしているとおもうんですね。
でも「焼いて」いるところは重要です。〈やきもち〉ということばにもあるように、比喩として嫉妬や恋情もここにはからんできているからです。もしかしたら「中途半端」というのはじぶんに対する〈いいわけ〉かもしれない。そんな〈やきもち〉感もここにはどことなくただよっています。
そもそも「焼きみかん」ってやきもちみたいにうまく焼けなさそうですよね。ぐじゅぐじゅいうのも、そうしたやきもちの形象化みたいなところがありそうです。
平井さんにはほかにもこんな〈おいしい川柳〉があります。
こんどはこれはまったくもっておいしい食べ物なので、すごくストレートにおいしい! っておもえるんですが、そのストレートが、いいんだろうかじぶん、どこかで屈折してなきゃだめなんじゃないか、浅くないかじぶん、とおもわせるような、たのしくて、おいしい川柳です。つまり、皿のうえには、
焼きうどん 味方ばかりの淋しい日 平井美智子
【焼きみかんという感情】
今回の〈おいしい川柳〉は、平井さんの句集『なみだがとまるまで』からの一句です。
「焼きみかん」ってふしぎなたべものですよね。
ふだんみかんを焼きませんから、そもそも〈焼こう〉とおもったときに、通常の意識のモードとはちがうとおもうんですよね。
みかん焼こうかな、焼いてたべたいな、という意識。
で、その通常とは意識がちがうモードが恋愛感情にたくされていくのがこの句の〈おいしい〉ところだとおもうんですよ。
「中途半端に人恋し」というのがですね、たとえばリブロースステーキや霜降りの焼き肉やモッツァレラハンバーグやジューシーな厚切りハムのサンドイッチやそれを一気呵成に飲み干すストロングコーラなどの欲動がストレートにほとばしっている食べ物ではなくて、焼きみかんという、いったいじぶんの意識はどういうありようなんだっていう〈中途半端〉な所在ない感じをだしているとおもうんですね。
でも「焼いて」いるところは重要です。〈やきもち〉ということばにもあるように、比喩として嫉妬や恋情もここにはからんできているからです。もしかしたら「中途半端」というのはじぶんに対する〈いいわけ〉かもしれない。そんな〈やきもち〉感もここにはどことなくただよっています。
そもそも「焼きみかん」ってやきもちみたいにうまく焼けなさそうですよね。ぐじゅぐじゅいうのも、そうしたやきもちの形象化みたいなところがありそうです。
平井さんにはほかにもこんな〈おいしい川柳〉があります。
こんどはこれはまったくもっておいしい食べ物なので、すごくストレートにおいしい! っておもえるんですが、そのストレートが、いいんだろうかじぶん、どこかで屈折してなきゃだめなんじゃないか、浅くないかじぶん、とおもわせるような、たのしくて、おいしい川柳です。つまり、皿のうえには、
焼きうどん 味方ばかりの淋しい日 平井美智子
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