【感想】宮本佳世乃『句集 鳥飛ぶ仕組み』の〈仕組み〉、或いは、肉。
- 2015/06/16
- 13:15
桜餅ひとりにひとつづつ心臓 宮本佳世乃
【桜餅の仕組み、おはようの仕組み、肉の仕組み】
句集『鳥飛ぶ仕組み』からかよのさんの一句です。
この句集のタイトル、「鳥飛ぶ仕組み」ってとてもインパクトあるタイトルなんですが、「鳥」という記号を雑駁にあつかわずに、「鳥」の生きるメカニズムとしての〈内部〉をていねいにみていこうとする〈視線〉のあらわれなのではないかともおもいます。
たとえば掲句。「ひとりにひとつづつ心臓」というのは、「ひとり」「ひとり」の〈生きるメカニズム〉への視線があらわれています。この句集の語り手は「ひとり」を「ひとり」として雑駁に記号的にあつかうんではなくて、その〈生きる仕組み〉をみようとしている。
「桜餅」もかんがえてみれば、〈仕組み〉的な食べ物ですよね。あんをもちごめでつつみ、さらにそれを桜の葉でつつむ。仕組みへの視線をさそう食べ物です。
またこのかよのさんの句集もうひとつの「仕組み」に、〈仕組み〉が〈仕組み〉として〈生きてくる〉おもしろさへの〈視線〉もあるのではないかとおもいます。
たとえばさっきの句の「つづつ」もそうなんですが、これはなんだかことばが自律して〈仕組み〉として生きてくるおもしろさがある。
で、かよのさんの句にこんな句があります。
おはやう冬桜みんなみへひかり 宮本佳世乃
かよのさんには山田露結さんと発行されているネットプリント俳誌「彼方からの手紙」に、
さやうならそしてさよなら葛の花 宮本佳世乃
という句もあったんですが、この「おはやう」や「さやうなら」のすこし時間がもたれるような感じの歴史的仮名遣いが〈ことばの仕組み〉として「さよなら」という時間性や「ひかり」がかたちづくる場所性にかかってきている気がするんですね。歴史的仮名遣いがつくる時間や空間。それもひとつのことばがうみだす〈仕組み〉なんじゃないかと。
〈仕組み〉とはそうした内部への視線、自律性への視点などいろいろかんがえられる。
そしてこんなストレートでパワフルな〈仕組み〉をがぜん打ち出したすてきな句もあります。ある意味で、吉田戦車的な〈肉とめし〉的〈仕組み〉の有無をいわせない世界観です。あっとうてきに、にく。
弁当の本質は肉運動会 宮本佳世乃
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