【お知らせ】中家菜津子『新鋭短歌シリーズ23 うずく、まる』(書肆侃侃房、2015年)の挿絵
- 2015/06/17
- 23:25
本日発売された中家菜津子さんの『新鋭短歌シリーズ23 うずく、まる』書肆侃侃房、2015年)の挿絵を描かせていただきました。
ページのななめしたに置くことで、2ページみひらきのおおきな余白が生まれ、あたかもそこに泡としての○がただよっていくようなすてきなレイアウトにしていただきました。
今回、お話をいただいてから、おなじかたちの・ちがったような〈うずくまる〉絵を何点も描きつづけてみたのですが、ひとつわかったことは、墨絵というのはぜったいにトレースできないということです。模写ができないんです。
あ、この表情いいな、とおもって、それをなんとかトレースしようとおもっても、じぶんで描いたもののはずなのに、〈コピー〉できない。表情はにどとおなじものはつくれません。おどろきましたし、おののきました。トレーシングペーパーをつかっても、それは無理なのです。
墨っていうのは、その意味で、どうあっても〈一回性〉なんだな、と思い知りました。
でもその〈一回性〉に中家さんの短歌の「うずく、まる」の〈うずく〉は、〈うずき〉としてあらがっているような気がして、一重の○じゃなく、二重の◎にしてみました。○がうずいているようにかんじられたからです。
うずくまる、という身体行為は、かんぺきなまるになろうとしても、なれないじぶんをひきうけるその〈うずき〉なのではないかとおもったのです。
水墨画や禅画では○は悟りをあらわします。でも、悟りじゃなく、うずきをひきうけなければならない。だから、○が○にどうしてもなれない〈うずき〉のことをずっとかんがえていました。
○はどうやって○になるのか。○はいつ○になるのか。
表紙絵のゴッホの○もかんぺきな○にはなれなくて、うずいています。
うずく、まるわたしはあらゆるまるになる月のひかりの信号機前/中家菜津子
(『新鋭短歌シリーズ23 うずく、まる』書肆侃侃房、2015年)
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