【こわい川柳 第三十三話】ゆっくりゆっくり辺り見回す 砂漠 山内令南
- 2015/06/18
- 13:06
ゆっくりゆっくり辺り見回す 砂漠 山内令南
【巨大な密室】
山内令南さんの作品集『夢の誕生日』からの一句です。
令南さんの川柳にはこわい川柳がたくさんあるんですね。
で、ちょっと何句かあげてみます。
手をつなぐきみを迷子にするために 山内令南
振り乱すためには髪をながながと 〃
階段を転げ落ちれば着く迷路 〃
誰も手をつないでくれず夜が来た 〃
晩秋や思い出せない誕生日 〃
で、あえてですね、これら〈こわい句〉が共有しているテーマを見出すとすれば、それは《彷徨(さまよい)》ということになるんじゃないかとおもうんですね。
たとえば掲句の
ゆっくりゆっくり辺り見回す 砂漠 山内令南
これも、さまよいへの扉をひらいているわけです。「砂漠」と確認したしゅんかん、彷徨の旅にでなければならない。それは定型ももう救ってはくれない。
令南さんの川柳には、なぜ川柳がこわいのかということのヒントが示されているようにおもうんです。
それは、定型が救ってくれないからだとおもう。
定型はあくまで定型ですから、定型はさまよいはしない。定型は定型でしかない。ところが語り手は、さまよう。とつぜん、砂漠にたちあう、迷子になる、迷路にたどりつく、じぶんの生まれた日を喪失する。
でも、定型はそれらをカヴァーしてくれません。
わたしたちは定型という頑丈な、せまい、密閉された、密室で、彷徨の旅人になる。
これがひとつの定型のこわさだとおもうんです。
でも、裏を返せば、だからこそ、定型はつねに外への〈穴〉がうがたれているともいえる。
黒い芽だけがまっすぐに伸びてゆき 山内令南
影だけが後ろを向いて走りだす 〃
そこには、暗さの、闇の、まっくろの、くらがりの、影のあたたかさがあります。
闇が、げんきなのです。ぬるくて。
闇に棲めば闇の明るさ温かさ 山内令南
【巨大な密室】
山内令南さんの作品集『夢の誕生日』からの一句です。
令南さんの川柳にはこわい川柳がたくさんあるんですね。
で、ちょっと何句かあげてみます。
手をつなぐきみを迷子にするために 山内令南
振り乱すためには髪をながながと 〃
階段を転げ落ちれば着く迷路 〃
誰も手をつないでくれず夜が来た 〃
晩秋や思い出せない誕生日 〃
で、あえてですね、これら〈こわい句〉が共有しているテーマを見出すとすれば、それは《彷徨(さまよい)》ということになるんじゃないかとおもうんですね。
たとえば掲句の
ゆっくりゆっくり辺り見回す 砂漠 山内令南
これも、さまよいへの扉をひらいているわけです。「砂漠」と確認したしゅんかん、彷徨の旅にでなければならない。それは定型ももう救ってはくれない。
令南さんの川柳には、なぜ川柳がこわいのかということのヒントが示されているようにおもうんです。
それは、定型が救ってくれないからだとおもう。
定型はあくまで定型ですから、定型はさまよいはしない。定型は定型でしかない。ところが語り手は、さまよう。とつぜん、砂漠にたちあう、迷子になる、迷路にたどりつく、じぶんの生まれた日を喪失する。
でも、定型はそれらをカヴァーしてくれません。
わたしたちは定型という頑丈な、せまい、密閉された、密室で、彷徨の旅人になる。
これがひとつの定型のこわさだとおもうんです。
でも、裏を返せば、だからこそ、定型はつねに外への〈穴〉がうがたれているともいえる。
黒い芽だけがまっすぐに伸びてゆき 山内令南
影だけが後ろを向いて走りだす 〃
そこには、暗さの、闇の、まっくろの、くらがりの、影のあたたかさがあります。
闇が、げんきなのです。ぬるくて。
闇に棲めば闇の明るさ温かさ 山内令南
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