【こわい川柳 第三十四話】仮眠から引き抜きずっと眠らせる きゅういち
- 2015/06/18
- 13:28
レヴィ=ストロースの構造主義が私たちに教えてくれるのは、記号は、他の記号から切り離して一つだけで取り上げてしまうと恣意的な意味に満たされてしまうから、つねに他の記号との関係の中で、しかも変形操作において把握されなければならないということです。
田崎英明『現代思想2008・11』
仮眠から引き抜きずっと眠らせる きゅういち
【チェーホフの書いた短編のタイトルは、「ねむい」】
こわいですよね。
この句がこわいのは、構造的にきちんとこわさをつくっているからだとおもうんですね。
たとえば一般的に、「仮眠」と「睡眠」は同義語・類語としてくくっています。イメージとしては、
仮眠≒睡眠
こんなかんじだとおもいます。
こんなふうにひとは意識化はしないけれども、いろんなことばを構造化し、カテゴライズし、ことばを使っています。でないと、こんらんしますよね。
ところがきゅういちさんのこの句では、「仮眠」と対立する対義語として「睡眠」が出てきています。
仮眠/睡眠
というふうに、仮眠と睡眠が二項対立になっているのです。
そのため、仮眠の反対である「睡眠」は、もはや〈仮〉ではなくなってしまうため、〈仮〉の反対の、〈真〉になります。「真眠」です。
「ずっと眠」ることになります。
構造的な転位が川柳でおこなわれたために、永眠することになってしまったのです。
こんなふうに川柳は構造的にこわい場合があるんです。
ちなみに短歌にはこんなにも〈ねむねむな歌〉が、俳句にはこんなにも〈永眠な句〉があります。
それらを引用して、ねむたげに、おわかれしましょう。
ねむいねむい廊下がねむい風がねむい ねむいねむいと肺がつぶやく 永田和宏
いつか星ぞら屈葬の他は許されず 林田紀音夫
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