【こわい川柳 第五十六話】きっとくる毬をついてる待っている 弘津秋の子
- 2015/07/01
- 12:30
きっとくる毬をついてる待っている 弘津秋の子
【→→→→→→→→→→→→→→→】
弘津秋の子さんの句集『アリア』からの一句です。
この句がこわいのは、〈定型の進行性〉によるものなんじゃないかとおもうんですね。
定型というのは、出発進行といいわたされた列車のようなものなんです(わたしは短歌もそうだとおもっていて、すべての定型詩は銀河鉄道なんじゃないかとおもっています)。
定型というのは、575ですが、この575の特徴はおおきくいうとふたつあります。
まずは列車のコンパートメントのように、分割されているという、分割性です。世阿弥が述べていた〈序破急〉にも近い。
序のゆっくりとはいってくる「きっとくる」、破で展開と動きが入ってくる「毬をついてる」、そして急でシーンは加速され「待っている」とくる。
で、定型の特徴のふたつめは、進行性です。575と分割されつつも、進行していく。進行していくということは、そこにかならず定型特有の〈時間性〉が生まれるということになります。基本的に列車が動き出すと逆走しないように、この進行性は不可逆です。
57までいったのに、また上5にもどっていくひとは、そうそういないはずです。そもそも定型は拍子や調子なので、逆走すると、〈きもちわるい〉はずです。律動的に。
で、秋の子さんのこの句のこわさは、定型の分割性と進行性をひじょうにたくみに使ったこわさとなっているのではないかとおもいます。
まず「きっとくる」で〈予期〉され、「毬をついてる」で「きっとくる」ものの〈属性〉が示され、「待っている」で「きっとくる毬をついてる」ものと〈わたし〉との〈関係性〉が示されます。
〈予期〉→〈属性〉→〈関係性〉の流れです。
そして実はハリウッド映画も、恋愛マンガも、ホラーも、ドラゴンボールも、民放ドラマも、アニメも、日常会話も、片想いも、両想いも、ブログも、授業も、小説も、エロマンガも、詩も、四コマも、AVも、文学も、『失われた時を求めて』も、きほんてきにはこの三つの流れを踏襲しているのではないかとおもいます。
なにかがはじまる〈予期〉→遭遇としての〈属性〉→あいてとわたしの〈関係性〉の決着。
ドラマとは、〈→〉のことなのです。
すすみましょう。
矢印のとおりに歩きおでこ打つ 弘津秋の子
【→→→→→→→→→→→→→→→】
弘津秋の子さんの句集『アリア』からの一句です。
この句がこわいのは、〈定型の進行性〉によるものなんじゃないかとおもうんですね。
定型というのは、出発進行といいわたされた列車のようなものなんです(わたしは短歌もそうだとおもっていて、すべての定型詩は銀河鉄道なんじゃないかとおもっています)。
定型というのは、575ですが、この575の特徴はおおきくいうとふたつあります。
まずは列車のコンパートメントのように、分割されているという、分割性です。世阿弥が述べていた〈序破急〉にも近い。
序のゆっくりとはいってくる「きっとくる」、破で展開と動きが入ってくる「毬をついてる」、そして急でシーンは加速され「待っている」とくる。
で、定型の特徴のふたつめは、進行性です。575と分割されつつも、進行していく。進行していくということは、そこにかならず定型特有の〈時間性〉が生まれるということになります。基本的に列車が動き出すと逆走しないように、この進行性は不可逆です。
57までいったのに、また上5にもどっていくひとは、そうそういないはずです。そもそも定型は拍子や調子なので、逆走すると、〈きもちわるい〉はずです。律動的に。
で、秋の子さんのこの句のこわさは、定型の分割性と進行性をひじょうにたくみに使ったこわさとなっているのではないかとおもいます。
まず「きっとくる」で〈予期〉され、「毬をついてる」で「きっとくる」ものの〈属性〉が示され、「待っている」で「きっとくる毬をついてる」ものと〈わたし〉との〈関係性〉が示されます。
〈予期〉→〈属性〉→〈関係性〉の流れです。
そして実はハリウッド映画も、恋愛マンガも、ホラーも、ドラゴンボールも、民放ドラマも、アニメも、日常会話も、片想いも、両想いも、ブログも、授業も、小説も、エロマンガも、詩も、四コマも、AVも、文学も、『失われた時を求めて』も、きほんてきにはこの三つの流れを踏襲しているのではないかとおもいます。
なにかがはじまる〈予期〉→遭遇としての〈属性〉→あいてとわたしの〈関係性〉の決着。
ドラマとは、〈→〉のことなのです。
すすみましょう。
矢印のとおりに歩きおでこ打つ 弘津秋の子
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