【川柳連作と散文】2020年の獺祭忌(『川柳の仲間 旬』200号・2015年7月号)
- 2015/07/01
- 21:52
200200年の太宰治 柳本々々
*200号記念に寄せた絵川柳なのですが、一応575定型になっています。「にじゅうまん/にひゃくねんのだ/ざいおさむ」
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しりとりの「ん」を貫いて「あ」につなぐ
俳諧と鬱の関係 秋葉原
ボコノンの定義が殖える分離帯
ひとびとがひと/ひとになる それがプピド
触診の内科医の手のメカニズム
ひゅううんと結婚と森とひゅんひゅうん
たたずんだそのしゅんかんにかすめた阿
本棚の残像だけの広辞苑
ロボットにつけまつげする獺祭忌
メカニカル・マサオカシキと手をつなぐ
柳本々々「2020年の獺祭忌」
ときどき無重力空間で体育座りしている正岡子規のことを、おもう。かれには、もはや、上も下もみぎもひだりも、ない。ただあるのは、うずくまる身体だけで、病床は、ギャラクシー規模で無限にひろがってゆく。子規の真横をときどきゆっくりと巨大なうちゅうせんが、とおる。わたしはその乗組員のひとりだ。船窓からわたしは子規をみつめている。子規が、なにかつぶやいた。わたしは、もういちど、という。子規が、もういちど、つぶやいて呉れる。「∞(ぷぴど)」と。
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【イマージュ「いま目の前から消えたものは何?】
しゅんかんにしゅんかんとしてふれている 柳本々々
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大川博幸さんの「ひろゆきの川柳六コマまんが道」にて、わたしの「最後まで(マトリョ)(ーシ)(カ)を)(してる」の句をマンガ化していただきました。とてもうれしいです。ありがとうございました!
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【課題「チャレンジ」】
転落の途中、課題を書き終える 柳本々々
難問ですね歯磨きをするブッダ釈尊 〃
チャレンジが担架に乗って運ばれる 〃
樹萄らきさん、桑沢ひろみさん、丸山健三さん、杉山太郎さんより特選に選んでいただき、選評をいただきました。ありがとうございました。
【転落の句評】
人生の転落途中って楽な方ばかり選ぶんだと思ってた。中にはいるんだ、課題をやり続ける人が。更に終えてるし。どこからどこへ転落していたんだろう? 樹萄らき
よく夢の中でこういうシチュエーションを体験する。失速感を漂わせながらもスピードのある句だと思ったけれど、読み直すと、人生と言う長いスパンにも当てはまる句だと気付く。 桑沢ひろみ
一つの精神をコントロール出来たことに賛辞、もう一度生きがいを見つけ出したようだ。それがチャレンジと言うものなのだろう。一生山河あり、書き終えるで生き返ったね。よかった。胸中の悩み、あきらめが半分、でもシナリオはチャレンジ、転落の途中の課題が明暗を分けた。人生チャレンジすることに意義あり。 丸山健三
【チャレンジ担架の句評】
そりゃ無茶だろう、という言葉が思い付く句ですね。担架が絶妙です。 杉山太郎
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「私の一句推薦」のコーナーで、樹萄らきさん、川合大祐さんから句評をいただきました。ありがとうございました!
『月刊誌少年少女』(付録:脚) 柳本々々
いまどきの少年少女のキャラクターは華奢で綺麗だ。付録、少年の脚だったらいいなあ。中学一年生くらいの年齢がいいなあ。 樹萄らき
_〇_〇_〇_〇_〇_〇_〇_◎_〇_〇_〇_〇_ 柳本々々
いや、これ歴史に残りますよ(本気)。ストリームにも似たようなことを書きましたが、〈読む〉っていうことを、これだけ試される句は、なかなかあるもんじゃない。ともかく、『旬』デビュー、おめでとうございます。 川合大祐
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川合大祐さんからは「ストリーム199号より鑑賞」においてもとてもていねいな鑑賞をいただきました。抜粋ですが引用させていただきます。ありがとうございました。
_〇_〇_〇_〇_〇_〇_〇_◎_〇_〇_〇_〇_ 柳本々々
いきなり超問題作なわけですが、これ、旬の例会で読み合わせしたとき、「どうやって発音するんだ、これ?」と、みんな頭を抱えたわけです。
…これは〈読む〉よりも、〈見る〉句なんじゃないかと思って。あの、そう思ったのはね、199号が出来た直後くらいに、東京に行ったんだよ。それで、渋谷駅で岡本太郎の『明日の神話』を見て。あ、何十メートルもあるようなでっかい壁画ね。そのなかに、こういう○の意匠がいくつも展開されているところがあって、ああ、これ、もともとさんの句に何か似てるなあ、って感じで見ていて、それで、この句は〈視覚〉に特化した川柳の可能性なんじゃないかと… 川合大祐「ストリーム199号より鑑賞」
*
眠るものまさに時間のかたちして 川合大祐
地面だと思うが星というべきか 大川博幸
耳をふさげば水は一面の青 樹萄らき
人間がふれてはならぬ白い花 桑沢ひろみ
人柄の良さに曳かれた万華鏡 丸山健三
青空をお付けしました水たまり 杉山太郎
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