【あとがき】岩松了『恋愛御法度―無駄と正直の劇的発作をめぐって』のあとがき
- 2015/07/03
- 16:55
書いたものについて、よく「細かいことにこだわりますね」といわれるのですが、それは確かにそうかもしれません。しかし、それは私としては、どうしても次のことをいっておきたいという衝動にかられる指摘であるのです。つまり、
「そのことは、あのことを伝えたいために必要な手段だからそうするのであって、何もそのことを言いたいわけではありません。伝えたいのは、あのことであって、そのことではないのです」
演劇は、その「あのこと」という展望のもとで、いっさいを許されているような気がするのです。
「でその、あのことってのは、いったい何ですか」と、せく人に聞かれそうですが、この質問には、とにかく私はふんばって「あのことってのは、あのことですよ」と答えておきたいと思います。
どのような意図で吐かれたにもせよ、私にとってその質問は、悪意以外の何ものでもないはずだからです。
ええ……まあ、わかりたいとは人間誰しも思うわけです。思うわけですが、「わかる」ということが「わからない」ということに勝るとは、ゆめゆめ思って欲しくない、と私は思うわけです。
岩松了「あとがき」『恋愛御法度―無駄と正直の劇的発作をめぐって』
「そのことは、あのことを伝えたいために必要な手段だからそうするのであって、何もそのことを言いたいわけではありません。伝えたいのは、あのことであって、そのことではないのです」
演劇は、その「あのこと」という展望のもとで、いっさいを許されているような気がするのです。
「でその、あのことってのは、いったい何ですか」と、せく人に聞かれそうですが、この質問には、とにかく私はふんばって「あのことってのは、あのことですよ」と答えておきたいと思います。
どのような意図で吐かれたにもせよ、私にとってその質問は、悪意以外の何ものでもないはずだからです。
ええ……まあ、わかりたいとは人間誰しも思うわけです。思うわけですが、「わかる」ということが「わからない」ということに勝るとは、ゆめゆめ思って欲しくない、と私は思うわけです。
岩松了「あとがき」『恋愛御法度―無駄と正直の劇的発作をめぐって』
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