【短歌連作】「三越のライオンがいるじゃないか」『かばん』2015年7月号
- 2015/07/09
- 19:53
【詞書】三越のライオンに手を触れるひとりふたりさんにん、何の力だ 荻原裕幸
三越のライオンに触れるきみの背にタッチなどというふうあいで ふれる
三越のライオンのまえで待ち合わせ幼いおまえに遠くから会う
三越のライオンに俺がまたがって取り押さえられ、「喜劇ばかり流行る」
三越のライオン(のなかにいるひと)がこたえてくれるこれからのこと
三越のライオンに乗って飛ぶ夜空 切ない顔できみが乗るモアイ
春だからモアイ・ボートに乗っている ここが先端ここでうかれる
三越のライオンにあたし帰りたい そういってきみがタイムリープする
三越のライオンのまえで告げられた「おともだちで」という花粉すぺしゃる
柳本々々「三越のライオンがいるじゃないか」
*
【添え書き】
オズの国には弱虫なライオンがいて、挨拶の国にはさよならをきれいに発音するさよなライオンがいました。そうして三越の国には吼えることを喪った、とわにねむるライオンがいます。私はそんなライオンたちの前で少しだけ小さく吠えてみたのです。「わお」と。
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