【こわい川柳 第六十二話】カラオケBOXを出るとあんかけの世界 泉紅実
- 2015/07/16
- 20:12
カラオケBOXを出るとあんかけの世界 泉紅実
【あんかけに放り込まれて 】
相対性によって場所っていうのはこわくなることがあるんだよ、っていう句だとおもうんですね。それはある意味、場所がこわくなったり、すごくなったりするしゅんかんにたちあうってことだとおもうんです。
しかもその場所自体はなにもしてないわけです。なにもしてないのに、相対性によって場所が激変する。
ふつうに暮らしていた日常世界が、密閉された音圧の高い部屋をふっと出たしゅんかん、あんかけみたいにどろどろして、浸透圧も変わってそうで、物の輪郭や風合いもかわって、わたしたちの五感さえも変わってそうな世界にかわっている。
満面の笑顔の横に立たされる 泉紅実
この紅実さんの句もそうだとおもうんです。「満面の笑顔」っていうのは、〈圧〉が非常に高い世界、「カラオケBOX」のようなものだとおもうんですよ。
そうした〈圧〉が非常に高いものの横に立たされたわたしは、わたしとしては変わっていないはずなのに変わっちゃうわけです。やばいよこの圧は、とわたしはわかっている。これもひとつの「あんかけの世界」にいれられることですよね。
紅実さんの句集のタイトルは、『シンデレラの斜面』なんですがこれもとても象徴的だとおもうんですよ。
斜面っていうのは、非常に不安定な場所で、じぶんで力を決められないところもある。水平に保とうとおもえば、じぶんでちからをいれて立つ必要があるし、急斜面なら、ちからをいれても流されて倒れかけになっていくかもしれない。ともかくタイトル自体、ひじょうに〈圧〉が高いんですね。
「シンデレラ」の話って、ガラスの靴が象徴的なんですが、男性側の規範にきちんと女性側がはまるかはまらないかの話じゃないのかなっておもうんですね。ガラスの靴をきちんとはけるっていうのはある意味、〈家庭〉にきちんと入ることでもある。だから近代にはいって、制度化された〈時間〉も守らなければならない。それが近代の〈家庭〉に入ることだからだともおもうんですよね。
でもそうしたぶぶんも、ぐらぐらしていくし、相対化されていく。
紅実さんの川柳のぐらぐらするちからっていうのはそういうところにあるんじゃないかなともおもいます。
シンデレラはガラスの靴じゃなくて、あんかけのなかに足をぬむっとさしいれるのです。制度としての句読点を相対化するために。
句読点省いてできあがる家族 泉紅実
【あんかけに放り込まれて 】
相対性によって場所っていうのはこわくなることがあるんだよ、っていう句だとおもうんですね。それはある意味、場所がこわくなったり、すごくなったりするしゅんかんにたちあうってことだとおもうんです。
しかもその場所自体はなにもしてないわけです。なにもしてないのに、相対性によって場所が激変する。
ふつうに暮らしていた日常世界が、密閉された音圧の高い部屋をふっと出たしゅんかん、あんかけみたいにどろどろして、浸透圧も変わってそうで、物の輪郭や風合いもかわって、わたしたちの五感さえも変わってそうな世界にかわっている。
満面の笑顔の横に立たされる 泉紅実
この紅実さんの句もそうだとおもうんです。「満面の笑顔」っていうのは、〈圧〉が非常に高い世界、「カラオケBOX」のようなものだとおもうんですよ。
そうした〈圧〉が非常に高いものの横に立たされたわたしは、わたしとしては変わっていないはずなのに変わっちゃうわけです。やばいよこの圧は、とわたしはわかっている。これもひとつの「あんかけの世界」にいれられることですよね。
紅実さんの句集のタイトルは、『シンデレラの斜面』なんですがこれもとても象徴的だとおもうんですよ。
斜面っていうのは、非常に不安定な場所で、じぶんで力を決められないところもある。水平に保とうとおもえば、じぶんでちからをいれて立つ必要があるし、急斜面なら、ちからをいれても流されて倒れかけになっていくかもしれない。ともかくタイトル自体、ひじょうに〈圧〉が高いんですね。
「シンデレラ」の話って、ガラスの靴が象徴的なんですが、男性側の規範にきちんと女性側がはまるかはまらないかの話じゃないのかなっておもうんですね。ガラスの靴をきちんとはけるっていうのはある意味、〈家庭〉にきちんと入ることでもある。だから近代にはいって、制度化された〈時間〉も守らなければならない。それが近代の〈家庭〉に入ることだからだともおもうんですよね。
でもそうしたぶぶんも、ぐらぐらしていくし、相対化されていく。
紅実さんの川柳のぐらぐらするちからっていうのはそういうところにあるんじゃないかなともおもいます。
シンデレラはガラスの靴じゃなくて、あんかけのなかに足をぬむっとさしいれるのです。制度としての句読点を相対化するために。
句読点省いてできあがる家族 泉紅実
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