【川柳】新設の…(川柳明日香創刊19周年記念全国誌上大会「お題:美」 川柳明日香2014年4月号掲載 林ひかり選)
- 2014/04/01
- 21:43
新設のピラミッドからする電話 柳本々々
(川柳明日香創刊19周年記念全国誌上大会「お題:美」 川柳明日香2014年4月号掲載 林ひかり選)
【自(分で)解(いてみる)-つながる/きれることのドラマ-】
電話というモチーフにむかしから強くあこがれているところがある。
カフカの『城』や、村上春樹の『ノルウェイの森』、カーヴァーの『ぼくが電話をかけている場所』などに電話はとても印象的なかたちで使われているのだが、かんたんにいうと小説のなかで電話がでてくるときはかならず接続と同時に切断を胚胎させる(ディス)コミュニケーションのかたちで出てくる。
つながりはしている、しかも一対一の親密性をもって。でも、いつ切れるかはわからない。わたしやあなたが切らなくても、外部の力によって断線するかもしれない。それに、あなたはあなたでないかもしれない。ちがったひとと話しているかもしれない。わたしの声もわたしの声として直裁に届いているわけではないかもしれない。
つながりつつも・きれていること。きれながらも・つながっていくこと。あいてのすがたはみえないままに、不在の存在のなかでやりとりし、応答をかわしていくこと。
電話は、話すだけで、つながるだけでドラマになる。
その電話が新設のピラミッドからであればおもしろいのではないか、というみもふたもないいかたになるけれど、そんな発想があったようにおもう。
つまり、ピラミッドという閉息させるための装置のなかに、外部につながるためだけの器具が設置される。それは、ピラミッドが内部のなかに外部をひきこむと同時に、外部をはらんだ内部になる瞬間でもある。
もちろん、ピラミッドが新設されるはずはない。
でも、新設されたら、きっとピラミッドには電話がそなえつけてあるだろう。ファラオだってそこからかけるにちがいない。「もしもし、すこし、おそくなるよ」と。
新設のピラミッドには、スタバだってはいるだろう。ファラオだって、ストロベリー・フラペチーノかなんかをたのむにちがいない。「やあ、グランデサイズでおねがいするよ。なにしろ、ながく、ねむりすぎた」
(川柳明日香創刊19周年記念全国誌上大会「お題:美」 川柳明日香2014年4月号掲載 林ひかり選)
【自(分で)解(いてみる)-つながる/きれることのドラマ-】
電話というモチーフにむかしから強くあこがれているところがある。
カフカの『城』や、村上春樹の『ノルウェイの森』、カーヴァーの『ぼくが電話をかけている場所』などに電話はとても印象的なかたちで使われているのだが、かんたんにいうと小説のなかで電話がでてくるときはかならず接続と同時に切断を胚胎させる(ディス)コミュニケーションのかたちで出てくる。
つながりはしている、しかも一対一の親密性をもって。でも、いつ切れるかはわからない。わたしやあなたが切らなくても、外部の力によって断線するかもしれない。それに、あなたはあなたでないかもしれない。ちがったひとと話しているかもしれない。わたしの声もわたしの声として直裁に届いているわけではないかもしれない。
つながりつつも・きれていること。きれながらも・つながっていくこと。あいてのすがたはみえないままに、不在の存在のなかでやりとりし、応答をかわしていくこと。
電話は、話すだけで、つながるだけでドラマになる。
その電話が新設のピラミッドからであればおもしろいのではないか、というみもふたもないいかたになるけれど、そんな発想があったようにおもう。
つまり、ピラミッドという閉息させるための装置のなかに、外部につながるためだけの器具が設置される。それは、ピラミッドが内部のなかに外部をひきこむと同時に、外部をはらんだ内部になる瞬間でもある。
もちろん、ピラミッドが新設されるはずはない。
でも、新設されたら、きっとピラミッドには電話がそなえつけてあるだろう。ファラオだってそこからかけるにちがいない。「もしもし、すこし、おそくなるよ」と。
新設のピラミッドには、スタバだってはいるだろう。ファラオだって、ストロベリー・フラペチーノかなんかをたのむにちがいない。「やあ、グランデサイズでおねがいするよ。なにしろ、ながく、ねむりすぎた」
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