【感想】よそ者として一心に踊りたる 松本てふこ
- 2015/07/29
- 23:32
よそ者として一心に踊りたる 松本てふこ
【読み手としてよそ者になること】
『川柳カード』9号(2015年7月)の自選句としててふこさんがあげておられたものです。
で、わたし、帰りの電車でこの句の感想を書こうとおもってずっとあれこれ書いていたんですよ。
ただどうしても自分が感じたようにうまく書けないんですね。この句の語り手がじぶんがどれだけ〈よそ者〉であろうとも〈踊っている/踊ろうとしている/踊りつづけている〉そのパワーに対して、わたしの感想がすごく理屈めいてくる。
あれ、あれ、っておもって、だめだ、書けない、とおもって、さっき駅を降りて帰ってきたんですが、でも帰り道にあるきながら、じつはそれがこの句にたいするひとつの〈正しい〉態度なんじゃないかとおもったんです。
この句ってすごく印象的なのが、とつぜん上五で「よそ者として」って自己規定から入っていくんですよ。「よそ者」っていうのも強い外部性をまとった言葉だし、「として」という定義もとても強い言葉です。うむをいわさないってやつです。
つまりこの句は上五でもう「よそ者」としてうむをいわさないかたちを選択し、それでも「一心に踊りたる」という行為に賭けようとしている。そのとき、読み手もこの句にとって〈よそ者〉にならないとまずいんじゃないかなっておもったんです。
「よそ者として」と言葉による自己規定から入った語り手は「一心」「踊りたる」とすべてのことばを捨てて「心」と「身体」の領域に入っていく。このとき、この領域にタッチできることばはないんじゃないかとおもうんです。むしろこういえるだけなんじゃないでしょうか。この句を読み終えたことでこのわたしも〈よそ者〉として規定されたのだと。
「一心に踊りたる」境地ってそういう境地だとおもうんです。読み手とも結託しない。この「一心」は、みんながおなじこころを、の一心ではなく、「たった一つの心」としてのよそ者であってもその心をマックスまで踊りでのぼりつめることだとおもうんです。
わたし、ときどき思うんですが、〈感想が書けない〉ことが〈正しい〉句って、あるんじゃないかとおもうんです。
わたしはすでによそから来ているか、あるいはもはや来もしない。よそ者性がいちばん馴染みのものの「核心」に姿を現す──馴染みというだけではあまりに言い足りない。
ジャン=リュック・ナンシー「侵入者」
【読み手としてよそ者になること】
『川柳カード』9号(2015年7月)の自選句としててふこさんがあげておられたものです。
で、わたし、帰りの電車でこの句の感想を書こうとおもってずっとあれこれ書いていたんですよ。
ただどうしても自分が感じたようにうまく書けないんですね。この句の語り手がじぶんがどれだけ〈よそ者〉であろうとも〈踊っている/踊ろうとしている/踊りつづけている〉そのパワーに対して、わたしの感想がすごく理屈めいてくる。
あれ、あれ、っておもって、だめだ、書けない、とおもって、さっき駅を降りて帰ってきたんですが、でも帰り道にあるきながら、じつはそれがこの句にたいするひとつの〈正しい〉態度なんじゃないかとおもったんです。
この句ってすごく印象的なのが、とつぜん上五で「よそ者として」って自己規定から入っていくんですよ。「よそ者」っていうのも強い外部性をまとった言葉だし、「として」という定義もとても強い言葉です。うむをいわさないってやつです。
つまりこの句は上五でもう「よそ者」としてうむをいわさないかたちを選択し、それでも「一心に踊りたる」という行為に賭けようとしている。そのとき、読み手もこの句にとって〈よそ者〉にならないとまずいんじゃないかなっておもったんです。
「よそ者として」と言葉による自己規定から入った語り手は「一心」「踊りたる」とすべてのことばを捨てて「心」と「身体」の領域に入っていく。このとき、この領域にタッチできることばはないんじゃないかとおもうんです。むしろこういえるだけなんじゃないでしょうか。この句を読み終えたことでこのわたしも〈よそ者〉として規定されたのだと。
「一心に踊りたる」境地ってそういう境地だとおもうんです。読み手とも結託しない。この「一心」は、みんながおなじこころを、の一心ではなく、「たった一つの心」としてのよそ者であってもその心をマックスまで踊りでのぼりつめることだとおもうんです。
わたし、ときどき思うんですが、〈感想が書けない〉ことが〈正しい〉句って、あるんじゃないかとおもうんです。
わたしはすでによそから来ているか、あるいはもはや来もしない。よそ者性がいちばん馴染みのものの「核心」に姿を現す──馴染みというだけではあまりに言い足りない。
ジャン=リュック・ナンシー「侵入者」
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