【短歌連作】「怪談短歌2015」『かばん』2015年8月号
- 2015/08/03
- 21:37
【詞書】逃れないあなたになったおめでとう朝までつづく廊下おめでとう 我妻俊樹
お供えをぎっしりつめた小箱にはおじがむらがる(ほとんどはみえない)
コピー機は死後の世界に似てるって残業中に田中がふいに
もういちど気化するピアノ、メロディーは液体になる姉のか・く・め・い
亡霊が希星(きらら)と名乗る放課後は、花子でなくてキラキラネーム
難解な空白のあるクラス会 だれかがふれてまちがっていく
しめあげるそのしゅんかんのだんりょくを滋養としてる宇宙花(うちゅうか)がある
「田山さんから聞いた話なんですけどね」で消える語り手(聞き手は田山)
天井にTSUTAYAの顔が浮いてくる身長のびる彼女ができる
柳本々々「怪談短歌2015」
*
【添え書き】
こないだ「うしろにいるよ。」と声がして、「え、うしろってどっち! うしろって方向がわからないからこわい!」と叫んでしまった。すると、「おまえこわいよ」とうしろから声がして、ぎゅうぎゅうとくびをしめられた。「わ か ら な い ん だ」とわたしはいった。まえをむいたまま。
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