【感想】もうひとり落ちてくるまで穴はたいくつ 広瀬ちえみ
- 2015/08/21
- 18:41
もうひとり落ちてくるまで穴はたいくつ 広瀬ちえみ
【●←あな、です】
きのうは広瀬さんの「サイレン」の句からはじめて、「穴」の句までたどりつきました。だからきょうはこの「穴」のことをすこしかんがえてみようとおもうんです。
ひとりずつ呼ばれる 穴は掘ってある 広瀬ちえみ
穴、っていうのは空白なのだけれども、その空白を「穴」と言語表出したしゅんかん、「空白」の「空白性」がうしなわれてしまうように、意味論としては「穴」っていうのはとても大事だとおもうんですね。
そもそも限定された空間であり、有限としての無限であり、またその無限が言語表象されることによって表出されるという点において、「穴」は「定型」とも似通っています。575定型はある意味で、連続した穴の連なりであり、そこに言語を通すことによって、穴が意味作用としてわいてくる。
この「穴」と「定型」の類似性はほかにもあって、「穴」も「定型」も〈メディア〉であるという点です。
きのうの最後に紹介した広瀬さんの「穴」の句は、「穴は掘ってあ」り、そのために「ひとりずつ呼ばれ」ているらしい。そういう状況がわかってきます。この一字空きも、きのうもお話しましたが、こんかいの一字空きはこれからこの呼ばれたひとたちがどうなるかわからない〈緊張感〉としての〈時間〉として空いているようにおもいます。
で、ですね。この句をめぐる〈緊張感〉っていうのはこれからなにが起こるかわからない緊張感もあるんですが、もうひとつ、この呼ばれたひとたちが「穴」に落ちることによってそのひとたちがどう〈変化〉してしまうのかわからない緊張感もあります。ただたんに落とされるだけなのかもしれないし、けがをしてしまうかもしれないし、しんでしまうかもしれないし、埋められてしまうのかもしれない。もしくは花を植えてください、というぜんぜん別の展開かもしれない。
大事なことは、〈穴〉というメディアになにかが通ることによってぜんぜん別の風景がこれから立ち上がろうとしていることです。穴になにかを通すことによって、風景じたいが変わってくる。
これはメディアとしての定型もそうなのです。17音しかない穴=定型にことばを通せば、それぞれの風景がたちあがる。定型は穴とともに、いつもそうした風景がたちあがる一歩てまえの緊張感をたたえています。
だから、穴は、「たいくつ」なのです。待ちかまえているから。定型も、たいくつなのです。あなたが落ちてきてくれるのを待っているから。
最初の句に、もどりましょう。
もうひとり落ちてくるまで穴はたいくつ 広瀬ちえみ
【●←あな、です】
きのうは広瀬さんの「サイレン」の句からはじめて、「穴」の句までたどりつきました。だからきょうはこの「穴」のことをすこしかんがえてみようとおもうんです。
ひとりずつ呼ばれる 穴は掘ってある 広瀬ちえみ
穴、っていうのは空白なのだけれども、その空白を「穴」と言語表出したしゅんかん、「空白」の「空白性」がうしなわれてしまうように、意味論としては「穴」っていうのはとても大事だとおもうんですね。
そもそも限定された空間であり、有限としての無限であり、またその無限が言語表象されることによって表出されるという点において、「穴」は「定型」とも似通っています。575定型はある意味で、連続した穴の連なりであり、そこに言語を通すことによって、穴が意味作用としてわいてくる。
この「穴」と「定型」の類似性はほかにもあって、「穴」も「定型」も〈メディア〉であるという点です。
きのうの最後に紹介した広瀬さんの「穴」の句は、「穴は掘ってあ」り、そのために「ひとりずつ呼ばれ」ているらしい。そういう状況がわかってきます。この一字空きも、きのうもお話しましたが、こんかいの一字空きはこれからこの呼ばれたひとたちがどうなるかわからない〈緊張感〉としての〈時間〉として空いているようにおもいます。
で、ですね。この句をめぐる〈緊張感〉っていうのはこれからなにが起こるかわからない緊張感もあるんですが、もうひとつ、この呼ばれたひとたちが「穴」に落ちることによってそのひとたちがどう〈変化〉してしまうのかわからない緊張感もあります。ただたんに落とされるだけなのかもしれないし、けがをしてしまうかもしれないし、しんでしまうかもしれないし、埋められてしまうのかもしれない。もしくは花を植えてください、というぜんぜん別の展開かもしれない。
大事なことは、〈穴〉というメディアになにかが通ることによってぜんぜん別の風景がこれから立ち上がろうとしていることです。穴になにかを通すことによって、風景じたいが変わってくる。
これはメディアとしての定型もそうなのです。17音しかない穴=定型にことばを通せば、それぞれの風景がたちあがる。定型は穴とともに、いつもそうした風景がたちあがる一歩てまえの緊張感をたたえています。
だから、穴は、「たいくつ」なのです。待ちかまえているから。定型も、たいくつなのです。あなたが落ちてきてくれるのを待っているから。
最初の句に、もどりましょう。
もうひとり落ちてくるまで穴はたいくつ 広瀬ちえみ
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